平成16年度のお題

「おてのこぶ」(4月1日号)

  • 蕗味噌(ふきみそ)や  おてのこぶにも  春をのせ(上中居町  吉成浜子)
  • 小さな手  二つ並べて  おてのこぶ(日高町  岡田幸)
  • 赤飯も  一味ちがう  おてのこぶ(阿久津町  山口ノブヱ)
  • 旅先で  朝市歩き  おてのこぶ(山名町  山田澄子)

「おてのこぶ」は、「おてのこぼ」ともいい、手のひらを軽く曲げたときにできるくぼみのことで、「手のくぼ」が変化した言葉です。総菜やおこわを少しだけもらうときに、お皿の代わりに使います。本市と群馬町では「おてのこぼ」が使われますが、それ以外の西毛地区では「おてのくぼ」が使われているようです。

「つぐ日・つぐ朝」(5月1日号)

  • 食べきれぬ  おかずはつぐ日の  膳にのせ(萩原町  土田千恵子)
  • 春の雨  つぐ日にょきにょき  蕨(わらび)でる(住吉町  小林玲子)
  • つぐ朝も  つぐ日も待てど  手紙来ず(岩鼻町  門倉まさる)
  • 美味美味と  ほめればつぐ日  同じもの(飯塚町  中村豊雄)

「つぐ日・つぐ朝」は、「次の日・次の朝」の意味で使われます。地元では、「そりゃあ標準語だんべえ」と思うくらい、当たり前に使われている言葉です。東京での学生時代、普通に「つぐ日」と言ったところ、友人たちから「それは何語だ」と言われ、初めておらほうの言葉だと気付いたくらいです。

「ちっとんべ」(6月1日号)

  • ちっとんべ  姉の意地出せ  ハルウララ(江木町  柳澤英子)
  • こつこつと  貯んだ利息は  ちっとんべ(八幡町  梅村ヨシ子)
  • あんこ煮る  塩ちっとんべが  味をきめ(中尾町  金井ノブエ)
  • 死ぬ思い  減らした体重  ちっとんべ(下小塙町  金井良江)

「ちっとんべ」は「ちっとんばい」とも言い、「少し」の意味の「ちっと」と「.ばかり」の意味の「ばい」がくっついた言葉です。なから少ないことを言い、直訳すると「すこしばかり」です。おすそ分けのときなどは「少しばかりですが」ともらうよりも「ちっとんべだけど」と出されたほうが温かい感じがしますね。逆に、もらった人が「こんなちっとんべ」と言うと、とてもきつく感じるから不思議です。

「まじっぺえ」(7月1日号)

  • まじっぺえ  宝石よりも  子の笑顔(中尾町  深澤アヤ子)
  • 夏の海  波と水着が  まじっぺえ(上佐野町  小山順子)
  • まじっぺえ  じっと我慢で  ハイチーズ(元島名町  佐藤政子)
  • いたずらの  鏡照らされ  まじっぺえ(佐野窪町  須川定良)

「まじっぺえ」は「まぶしい」という意味の方言です。佐久や会津などでも使われていますが、群馬の中毛地域では「ひずりい」と言う人もいます。現代語では「マジ」は「本当」という意味で使われるのが一般的です。「おらほう」でない人にとって「マジっぽい」は「本当らしい」という意味になってしまいます。「まじっぺえ」を使う際には、ご注意を…。

かんます」(8月1日号)

  • かんますな  怒る親父は  鍋奉行(上小塙町  内田栄一)
  • 定年で  ぬか床かんます  主夫となり(片岡町  金井よし子)
  • おもちゃ箱  かんまし見つけた  お気に入り(石原町  本多郁恵)
  • 金魚鉢  かんます孫に  猫笑い(寺尾町  真舘久)

「かんます」は「かき混ぜる・かき回す」という意味で使われます。信州や会津などの地方でも使われています。以前、テレビの料理番組で、下仁田町出身の元アイドルが、共演者に向かって「郁恵さん、それ、かんましてください」と言ってしまったことがあります。「郁恵さん」は意味が分からず、キョトンとしていましたが、テレビからふと飛び出したおらほうの言葉、何となくうれしい気分です。

「まーず」(9月1日号)

  • ニセ温泉  まーずがっくり  効き目なし(片岡町三丁目  木内和)
  • お年寄り  まーず元気で  玉を打ち(萩原町  土田千恵子)
  • この夏は  まーず暑くて  長かった(上大類町  新井京子)
  • ネオンより  まーずきれいな  虫の声(中尾町  深沢アヤ子)

標準語で「まず」は「まっさきに・ともかく」の意味や、「まず間違いない」のように「おおよそ」の意味です。上州で「まーず」といえば「とても」に近い意味で、「まーず暑いんさね」のように形容詞を強調する言葉になります。 ある大工が、施主が出してくれたお茶がおいしかったので「このお茶は、まーず、いいお茶だいのー」とほめたところ、県外出身の施主は「まずいお茶だ」と言われたのだと思い、気分を悪くしたとのこと。いかにも「おらほうの言葉」らしいこのエピソードを紹介したくて「まーず」をお題にしました。

「おこんじょ」(10月1日号)

  • 運動会  おこんじょ雨が  邪魔をする (飯塚町  中村豊雄)
  • おこんじょで  気を引く淡い  恋心 (北久保町  根本丈男)
  • 弟は  おこんじょされても  ついて行く (南大類町  新後閑よう子)
  • 好きだった  おこんじょされても  好きだった (岩鼻町  門倉まさる)

「おこんじょ」は「意地悪」という意味の方言です。主に群馬の西毛地域でよく使われ、東毛ではあまり使われないようです。方言界では全国的に有名な言葉らしく、各地の方言を集めたインターネットのホームページに、群馬弁代表として顔を出しています。それだけに投句数も多く、九十九句をいただきました。ちなみに岡山県では「おこんじょ」といえば魚の「オニオコゼ」のことです。

ずら」(11月1日号)

  • ダイエーも  西武も野球  ずらあねえ (聖石町  小林千美)
  • くたびれた  連休ずらない  孫の世話 (上小塙町  内田栄一)
  • 鶏を  笑うずらない  物忘れ (萩原町  土田千恵子)
  • 大いびき  眠るずらない  旅の宿 (岩鼻町  門倉まさる)

「ずら」といえば静岡や松本の方言として有名ですが、おらほうの「ずら」は、ちょっと意味が違います。 静岡の「ずら」は、語尾にくっついて「~だろう」という推量の助動詞として使われます。「そう言ったずら」は「そう言ったでしょう」の意味です。上州弁の「だんべえ」に近い言葉です。 おらほうの「ずら」は、ほとんどの場合、「ない」を伴って「~ずらねえ」と使われます。「~どころではない」という強い否定を意味します。越後長岡でもこれと同じ用法で「~ずらねえ」が使われています。

「じゅーく」(12月1日号)

  • 電話口  日増しにじゅーく  孫の声 (阿久津町  山口ノブヱ)
  • 保育園  じゅーくも風邪も  持ち帰る (八幡町  梅村ヨシ子)
  • 子の意見  じゅーく言うなと  聞かぬ父 (上佐野町  小山英雄)
  • じゅーく言ふ  孫にじじばば  笑いこけ (高砂町  井田宗佑)

「じゅーく」は、「生意気」とか「おしゃまな」という意味で使われます。「おじゅーく」とも言います。幼い子が「おしゃまな」ことを言うと「この子は、おじゅーくだね」と、大人たちは目を細めてくれます。中学生くらいになって「生意気」なことを言うと「じゅーくばかり言うんじゃない」と、大人たちは怒り出します。

「てんで」(1月1日号)

  • てんでいい  晴れ着すがたの  孫むすめ (山名町  黒澤輝美)
  • てんで駄目  それでももしやと  くじを買い (上中居町  吉成浜子)
  • ピカソの絵  おれにはてんで  わからねえ (聖石町  小林千美)
  • なまの文字  てんで少ない  年賀状 (金井淵町  真塩康雄)

「てんで」は、打ち消しや否定的な意味の語を伴って「まったく」とか「まるっきり」の意味で「てんで駄目」のように使われます。 また、打ち消しの語を伴わないで「とても・非常に」の意味で「てんで具合がいい」などのようにも使われます。同じ「てんで」でも「それぞれ」の意味で使うのが主流の地方もあり、越後地方では「てんで持ち」といえば「割り勘」のことを言います。群馬では「てんでん」と「ん」をつけて言うことが多いですね。

「いきあう」(2月1日号)

  • 久し振り  行き会う友の  名が出ない (飯塚町  中村豊雄)
  • 常のごと  夢に行き会う  母やさし (中尾町  深沢アヤ子)
  • 行き会うた  思い出語る  共白髪 (佐野窪町  須川定良)
  • 行き会って  あいそこぼされ  はて誰や (上中居町  吉成浜子)

「行き会う」は、「いきあう」と発音し、出先でばったり誰かと会ったことを表します。「きのうな、まちに行ったら先生に行き会ったんさー」のように使います。 「ゆきあう」という読み方で辞書にも載っていますから、一見標準語のようですが、他県の人によると「その場合、単に『会う』とか『出会う』って言うんじゃないの」と、「行き会う」にはかなり違和感があるようです。とはいえ、万葉集や伊勢物語にも「行き逢ひて」と登場する、由緒あるおらほうの言葉です。

「くれる」(3月1日号)

  • くれる娘の  ドレス踏んでる  男親 (上佐野町  長井惠)
  • 病気して  薬は馬に  くれるほど (聖石町  小林千美)
  • 物よりも  愛をくれると  妻に言う (北久保町  根本丈男)
  • くれた娘を 今も案ずる 老ふたり (上佐野町  小山英雄)

他県の人が最も用法に悩むのがこの「くれる」だといいます。「くれる」は「娘を嫁にくれる」や「植木に水をくれる」などのように「やる・あげる」の意味で使われていますが、一般には「こんなものくれてやる」のように、ちょっと乱暴な、あまりありがたくないニュアンスでとらえられるようです。さらに言えば「あの人は良くしてくれる」のように、自分が人から、何かしてもらうことを指すことが多く、花に水をやる行為は標準的には「水やり」であり「水くれ」とは言いません。

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