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平成13年度のお題
『みしみる』(その1)【3月1日号】
- ほうき手に みしみて汗ばむ 春の雪
(岩鼻町 近藤 トモ子) - 老いてなお みしみて励む 寒げいこ
(岩鼻町 近藤 政男) - はな結び みしみて愛を ラッピング
(江木町 柳澤 英子) - 食べること 寝ることみしみる 恋女房
(北久保町 根本 丈男) - みしみても リストラされる この不況
(佐野窪町 須川 定良) - 職探し みしみてやれと リストラの父
(倉賀野町 大山 馨)
(敬称略)
「受験は、みしみて勉強したからといって必ず受かるとは限らない」のように「みしみる」は、「身に染みる」から派生したもので、一所懸命、真剣にすることを意味します。
『わりかし』【2月1日号】
- わりかしと 振り袖似合う 茶髪の娘
(上小塙町 内田 栄一) - 口下手な 息子わりかし 親思い
(中尾町 深沢 アヤ子) - 厚化粧 してもわりかし 化けぬ顔
(萩原町 土田 千恵子) - そうだんべぇ わりかし使う おらが爺
(寺尾町 真舘 久)
(敬称略)
「昨年に比べて今年の冬はわりかし暖かい」「店の品ぞろえがわりかし若者向けだ」のように、「わりかし」は、比較的という意味で使われます。また、「オランダコロッケは、わりかしおいしいよ」というふうに、単に比較だけではなく、断定を和らげるときにも使われます。
『かくねる・かくなす』【1月1日号】
- 太鼓腹 上手くかくなす 服を着る
(上大類町 新井 京子) - かくねるが 孫に見つかる 咳ひとつ
(飯塚町 中村 豊雄) - かくねたい スッピンなのに 急な客
(上佐野町 小山 英雄) - へそくりを そっとかくなす 妻の留守
(岩鼻町 近藤 政男)
(敬称略)
「かくねる」は「いたずらをして押し入れにかくねた」のように「隠れる」の意味。隠れん坊のことを「かくねんぼ」「かくねっこ」ともいいます。また、「かくなす」は「給食のパンを机の奧にかくなした」「できの悪いテストをげた箱にかくなす」のように「隠す」の意味です。とかく子どもは場違いな所にかくなします。その発想をへそくりに応用したいものですね。
『むてっこじ』【12月1日号】
- 大掃除 外れぬ障子 むてっこじ
(山名町 山田 澄子) - むてっこじ する子でけがの 絶え間なし
(日高町 猿渡 道子) - 歩道橋 くだる自転車 むてっこじ
(八千代町四丁目 上原 興栄) - おれに似て むてっこじだと 笑う父
(上佐野町 小山 英雄)
(敬称略)
「むてっこじ」は、考え無しで無鉄砲なことを意味し、「むてっこぎ」ともいいます。星野光儀さんの著書「群馬の方言をさぐる」によると、「むて」は手に何も持っていないこと、「こじ」は戸やかぎをこじ開けることで、手段や思慮なく、無理に物事を行うことを意味すると解説されています。
『とっつき』【11月1日号】
- 道聞かれ 左へ曲がった とっつきよ
(八千代町四丁目 桜井 昌子) - 寄っていけ そのとっつきが おらがちさ
(上中居町 高田 幸子) - 秋とっつき 脱いだり着たり 落ち着かぬ
(岩鼻町 近藤 久子) - とっつきにくい 人に嫁いで 六十年
(日高 町 猿渡 道子)
(敬称略)
「とっつき」は、場所を説明するときに使われることが多く「とっつきの角を右に曲がって、とっつきの店」のように、最初のものを指し示す言葉です。また「とっつきやすい人」「とっつきが良くない人」など人に対して使われるときは第一印象のことや人当たりのことを意味します。さらに「雑草の種が衣服にたくさんとっつき、取るのがやっかいだ」のように「取り付く」から転じたと思われる「とっつく」という表現もあります。
『ばい』(その1)【10月1日号】
- 七五三 今着たばいで もう脱ぐと
(上大類町 松本 節子) - 染めたばい 出てくる白髪 あきらめる
(萩原町 土田 千恵子) - 来たばいで 話がはずむ クラス会
(岩鼻町 近藤 久子) - わんぱく子 着替えたばいで もう汚し
(佐野窪町 須川 定良) - ダイエット したばいなのに バイキング
(日高町 猿渡 道子) - 赤ちゃんが 寝たばいだから 静かにね
(飯塚町 矢野 みゑ子)
(敬称略)
「ばい」は「いま食べたばいなのに・・・」「遊んでばいいる」のように「~ばかり」という意味で使われます。「ばい」の代わりに「ばっかし」や「べえ」が使われることもあります。
『なす』【9月1日号】
- にわか雨 助かりましたと 傘をなす
(岩鼻町 近藤 政男) - 借りた傘 なした帰りに 雨に逢い
(上佐野町 長井 恵) - なし忘れ 本の持ち主 今は亡き
(上小塙町 内田 栄一) - お返しの 砂糖を入れて 器なす
(上大類町 松本 節子) - すぐなすと 借りっぱなしの お賽銭
(下小塙町 小林 まさ子) - なすことが できれば歳を 熨斗つけて
(飯塚町 中村 豊雄)
(敬称略)
『ひょーる』【8月1日号】
- たなばたの 竹ひょーるほど 飾り付け
(萩原町 土田 千恵子) - 眠くなり ひょってむずかる 背中の子
(上大類町 松本 節子) - 利き枝や 見事にひょーる 盆の栽
(中居町 浅野 清太夫) - かかったぞ 釣り竿ひょーる 緑地池
(乗附町 高橋 アサ子) - 熱帯夜 ひょーる野菜の 夢を見る
(飯塚町 中村 豊雄)
(敬称略)
「ひょーる」は「ひよる」ともいい、「炎天下に出しておいたらテーブルがひょーった」「重いものを乗せ過ぎて棚がひよる」のように、板などが乾燥して反り返ったり、ゆがんだりすることを意味します。
『どどめ』【7月1日号】
- 母嘆く どどめに染まる 白きシャツ
(佐野窪町 須川 定良) - 竹筒で どどめつぶして ジュース飲む
(貝沢町 深町 喜志子) - 食わねーと いう口の中 どどめ色
(中豊岡町 馬場 敬子) - どどめ食べ 新しい服 そっとぬぎ
(西横手町 小林 沢枝) - どどめ食べ 口むらさきを なつかしむ
(八千代町四丁目 上原 興栄) - 年老いて 転んだあとが どどめ色
(根小屋町 酒井 ます子)
(敬称略)
桑の実の俗称「どどめ」は、主に関東地方の養蚕が盛んな地域で使われている言葉です。蚕のエサになる桑の葉を摘みに行き、足をとどめて食べた桑の実を「とどめ」「どどめ」といったのではないでしょうか。ちなみに「どどめ色」とは、濃い赤紫色のことです。
『さんざ・さんざっぱら』【6月1日号】
- おねだりを したくてさんざ 肩たたき
(中尾町 深沢 アヤ子) - さんざ呑み もうダメダメと コップ出し
(上佐野町 小山 英雄) - さんざっぱら 食ったあげくの 医者通い
(稲荷町 松本 秀子) - さんざっぱら 並んだくじは みなはずれ
(石原町 金子 春雄) - さんざ待ち 僕はあて馬 友の嫁
(江木町 柳澤 英子)
(敬称略)
「さんざ」は、甚だしいことを意味します。「昨日、イモをさんざ食べた」というときは、一度に食べた量の多いことを意味し、「幼い頃、イモをさんざ食べた」というときは、食べた回数の多いことを意味します。「さんざっぱら」は、「さんざ」を強調する言葉です。
『あんけらこんけら』【5月1日号】
- 春咲きが あんけらこんけら 色盛り
(萩原町 田口 夏美) - 孫たちを あんけらこんけら 待つ連休
(上佐野町 小山 英雄) - バス停で あんけらこんけら 待ちぼうけ
(下之城町 三田 二三男) - 腹だけは あんけらこんけら しても減り
(上小塙町 内田 栄一) - 爺留守で 日永一日 あんけらこんけら
(聖石町 毛呂 英子)
(敬称略)
「あんけらこんけらバスを待つ」「街中をあんけらこんけら歩く」など「あんけらこんけら」は、手持ちぶさたでぼーっとしていることを意味します。春の日差しの中、あんけらこんけらと散歩をする時間を持ちたいものですね。
『めっぱ・めかご』【4月1日号】
- めっぱまで 夫婦仲良く できにけり
(和田町 片岡 登志雄) - めかごでき 古井戸さがし がんかける
(西横手町 小林 沢枝) - まためかご 色目使うと からかわれ
(上佐野町 小山 英雄)
(敬称略)
「めっぱ」は、「めかご」「めかいご」「ものもらい」ともいわれ、まぶたにできる小さいおできのことで、学術的には「麦粒腫」という名称が付いています。
「めっぱ」ができたとき、井戸に願をかける風習があったそうです。井戸の淵からざるを半分だけ水面に映し、早く治るようにと願をかけ、治ったら井戸にざるを全部映し感謝するというおまじないです。治ったからといって感謝するのを忘れると、また「めっぱ」ができてしまうそうです。