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自然を染める ベニバナ

ページID:0004131 更新日:2024年2月15日更新 印刷ページ表示

ベニバナ

ベニバナ(キク科)

エジプトやメソポタミア地方、または中央アジア原産と言われている二年草。高さは60~100センチになる。葉には縁に鋸歯(きょし)があり、先が鋭いとげになっている。6~7月、アザミに似た橙黄色の花をつける。実からはリノール酸を含むベニバナ油が採れる。

説明

ベニバナは、飛鳥時代ごろに、染色方法とともに中国から渡来したと考えられています。ベニバナの末(花の先)を摘んで、染料や薬を作ったことから「末摘花(すえつむはな)」とも呼ばれていました。この末摘花は、源氏物語の巻名にもなっています。

平安時代の女房装束「襲(かさね)の色目」、いわゆる十二単の色目には紅染が多く使われ、貴族社会にはなくてはならないものでした。染料や薬用のほかにも、口紅やほお紅、菓子の着色などに使われました。ベニバナで作る良質の口紅は、塗り重ねると見る角度によって玉虫のように色が変わることから、江戸時代後期には「笹色紅」と呼ばれ、女性たちのあこがれの的でした。

ベニバナの花は、黄と紅の色素を含んでいます。紅色を染めるときは、まず黄色色素を水で洗い流してから、灰汁(あく)などのアルカリ性の液に浸して紅色色素を抽出します。アルカリ性のままだと布が染まらないため、梅の実から作る烏梅(うばい)などで液を酸性にしながら染めます。

このように、複雑で高度な技術を必要とする染色方法を、古代の人たちはどのように知ったのでしょうか。古代人の知恵に驚かされるばかりです。

紅の匂ひ
女房装束・襲の色目「紅の匂ひ」