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自然を染める イチイ

ページID:0004122 更新日:2024年2月15日更新 印刷ページ表示

イチイ

イチイ(イチイ科)

日本では北海道から九州まで分布し、特に東北地方や北海道などの寒冷地に多い常緑高木で、高さ10~20m、直径1mに達する。葉は長さ約2cmの線形で、らせん状に互生する。3月~5月に開花し、果実は9月~10月に熟す。

説明

イチイは別名アララギ、北海道や東北地方ではオンコとも呼ばれています。秋になると果実(外皮種)は、紅色に熟し甘く食べられますが、種子には毒があります。

イチイの材は、古来、高官が公の行事の際、束帯を身につけたときに手に持つ「笏(しゃく)」の材料として使われていました。このことからイチイの名は、高官の位階、正一位、従一位の「一位」にちなんで付けられたといわれています。

材は、そのほか建築や家具、彫刻などにも使われ、特に飛騨高山の一位細工は有名です。

イチイの心材は赤みを帯びていて、赤を染めるときに使うスオウの代用としていたことから、地方によってはヤマスオウ、ミネスオウ、アカギとも呼ばれています。

この心材だけを使って染めると、灰汁媒染(あくばいせん)で赤褐色を染めることができます。

幕末の蝦夷(えぞ)地探検家で「北海道」の命名者である松浦武四郎の文献「天塩日誌」には、アイヌの人たちがイチイを使って染色した技法についての記述があります。内皮の煮汁、または内皮とともに煮て赤を染めたと記されています。

イチイで染めた生糸
イチイで染めた絹糸