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旧新町紡績所

ページID:0002508 更新日:2023年12月18日更新 印刷ページ表示

​高崎市にある指定文化財 国指定

旧新町紡績所 航空写真
旧新町紡績所は、高崎市南東の新町、北の温井川と南の国道17号の間に位置します。明治初期、蚕の繭から作る生糸は我が国の主力輸出品でしたが、生糸を作る製糸の過程で生じる屑糸や屑繭は安価で海外に輸出されていました。明治6年、工部省の佐々木長淳は欧州歴訪後、絹糸紡績工場の設立を上申し、明治8年10月、製糸が盛んな地域で温井川の水利が良い当地に工場用地を定めました。明治9年2月に内務省勧業寮の所管として建築工事に着手、同10年7月に操業を開始し、同年10月20日に開業式が行われました。開業式は、内務卿大久保利通、大蔵卿大隈重信、工部卿伊藤博文、内務少輔前島密、勧農局長松方正義、群馬県令楫取素彦など、政府の要職が多数参列するなど盛大なものでした。

旧新町紡績所は、富岡製糸場から5年後の明治10年に明治政府が設立した絹糸紡績工場です。佐々木長淳を総括とし、ドイツ人の指導を受けながら大工の山添喜三郎ら日本人の手で建設されました。希少な木造の工場建築がほぼ完全な規模で残り、明治初期の建築技術をよく示しているため、歴史的に高い価値を持つと評価されました。また、明治期の絹糸紡績工場唯一の遺構であり、絹糸紡績業の発展の過程を示すものとして、学術的価値が認められました。

平成27年7月8日に国の重要文化財として建造物5棟が指定されました。また、平成27年10月7日に国の史跡として、明治10年建築の工場本館を中心とした10,589.02平方メートルが指定されました。

※旧新町紡績所は食品工場内にあるため現在公開していません。

旧新町紡績所の建造物5棟(国指定重要文化財)

工場本館

旧新町紡績所の工場本館
木造、平屋建、桟瓦葺、建築面積6,572.93平方メートル。明治10年建築の官営期工場部と、明治中期から後期にかけて段階的に増築された増築部からなる。官営期工場部は切妻造屋根で、コの字形配置。紡績工程に沿って直線的に機械が置かれていたが、機械の増設に伴いコの字形の中庭部に鋸屋根の建物を増築し、自由度の高い平面的な拡張が可能となった。内部柱の基礎はろうそく石状の独立基礎で、北棟内部に2本の柱列が並び、東棟・西棟は中央に柱列が並ぶ。小屋組はキングポストトラスであるが、棟木と陸梁の中間部を水平の合わせ梁で固め、中間には和小屋風の束を入れるなど独自の工夫が見られる。明治5年設立の旧富岡製糸場と比べ簡素な建物であるが、これは他の模範となるよう緻密で堅牢でありつつもなるべく虚飾を省き経費を節減するためである。洋風建築の技術と日本在来の技術を併用しており、明治初期の洋風建築導入期の折衷的な様相を示している。

機関室

旧新町紡績所の機関室
明治31年頃建築。煉瓦造、平屋建、一部地下一階、建築面積414.21平方メートル。屋根は入母屋造あるいは切妻造、鉄板葺。平面はボイラーが置かれた汽かん室を中心に、東を汽機室、その南をモーター室、汽かん室西に工員控室を付し、北に木造の物置を附属。
(附)煙突基礎は、汽かん室の西隣にある鉄製煙突の煉瓦造基礎で、直径4.5m、高さ2.5mで、南に煙道、北に点検口を開く。
(附)煙突銘板には、「東京/芝浦製作所製/明治丗一年七月竣工」(右から左書き)の銘がある。

修繕場

旧新町紡績所の修繕場
明治10年頃建築。木造、平屋建、桁行20.0m、梁間8.2m。屋根は切妻造、鉄板葺。当初は機関室の西にあったが、大正5年に移設。小屋組は、官営期工場部と共通する意匠のキングポストトラス。

倉庫

旧新町紡績所の倉庫
明治30年頃建築。煉瓦造、平屋建、桁行25.2m、梁間11.6m。屋根は寄棟造、桟瓦葺。キングポストトラスに似た変形小屋組。煉瓦壁はイギリス積の一枚半厚。東面はパラペット状に壁を立ち上げ、壁頂部全周にモルタル塗りのロンバルド帯を廻すなど装飾的な外観である。

二階家煉瓦庫

旧新町紡績所の二階家煉瓦庫
明治27年頃建築。煉瓦造、二階建、桁行8.0m、梁間6.2m。屋根は切妻造、桟瓦葺。煉瓦壁は1階を一枚半厚、2階を一枚厚のイギリス積。建物四隅に隅石を積む。小屋組はキングポストトラス。

二階家煉瓦庫の附 工務室

明治後期頃に建築。煉瓦造、桁行11.5m、梁間6.0m。小屋組はキングポストトラス。切妻造、鉄板葺。煉瓦壁はフランス積。

二階家煉瓦庫の附 旧男工控室

明治後期頃に建築。木造、平屋建、桁行18.2m、梁間9.1m。屋根は切妻造、桟瓦葺。小屋組はキングポストトラス。

※キングポストトラス:三角形の頂点から底辺に向けて垂直材を下ろした形態。垂直材をキングポスト(真束)という。

文化財情報(重要文化財)

  • 指定種別:国指定重要文化財
  • 名称:旧新町紡績所(きゅうしんまちぼうせきじょ)
        工場本館(こうじょうほんかん)
        機関室(きかんしつ)、附・煙突基礎(つけたり・えんとつきそ)、附・煙突銘板(つけたり・えんとつめいばん)
        修繕場(しゅうぜんじょう)
        倉庫(そうこ)
        二階家煉瓦庫(にかいやれんがこ)、附・工務室(つけたり・こうむしつ)、附・旧男工控室(つけたり・きゅうだんこうひかえしつ)
  • 指定年月日:平成27年7月8日
  • 所在地:高崎市新町

文化財情報(史跡)

  • 指定種別:国指定史跡
  • 名称:旧新町紡績所(きゅうしんまちぼうせきじょ)
  • 指定年月日:平成27年10月7日
  • 所在地:高崎市新町