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平成22年度のお題
『~がね・~だがね』【3月1日号】
今月のお題「~がね・~だがね」は、形容詞や動詞の語尾にくっついてよく使われています。共通語だと、「~よ・~よね」に近いでしょうか。文字で見ると、少しぶっきらぼうな感じですが、群馬県人なら分かる温かみのある表現ですよね。
- ゆったがね 聞いてねえがね 老夫婦
(小八木町 吉田 斗み江) - 白髪染め ちょっぴり若く 見えるがね
(萩原町 土田 千恵子) - 試着室 離れぬ妻に いいがねと
(八幡町 須田 美千代) - ダイエット? 今日はいいがね 食べちゃえば
(倉賀野町 田村 佐和子) - 梅開花 種まき芋植え 時期だがね
(阿久津町 山口 ノブヱ) - 合格だ 良かったがねと 仏壇に
(檜物町 三木 たみを) - うれしいね あなたも群馬か 「そうだがね」
(保渡田町 原沢 進一)
(敬称略)
お便り紹介
「お茶ぐらい いいがね手盆で すすめられ」お客さんが来ると「上がってお茶でも飲んでぎー」と勧めます。逆に自分が行くと「一杯くらいいいがねー」と勧められます。人と人との良い関係ですね。(貝沢町の大塚節子さん)
「あるがねと 白髪を抜いた 妻の笑み」亡き妻はとても明るい性格で、いつもふざけては笑っていました。川柳を考えていて、ふとそんな光景が懐かしく思い出されました。(中泉町の横山博之さん)
『いきなし』【2月1日号】
今月のお題「いきなし」は、「いきなり」という意味のおらほうの言葉です。
良い知らせも悪い知らせもいきなしやってくるもの。「おれおれ」とかけてくる「振り込め詐欺」は勘弁ですが、急な友人との再会は、いきなしでもうれしいものですね。
- 体重が いきなし増えた お正月
(萩原町 土田 千恵子) - いきなしに 茶髪で来たる 孫はたち
(倉賀野町 田村 勲) - 知らぬ人 いきなし会釈に めがねかけ
(江木町 茂木 富男) - いきなしの 再会だけど 名が出ない
(八幡町 須田 美千代) - おれおれと いきなし言われ 身構える
(八幡町 梅村 ヨシ子) - いきなしの 採用通知に 頬つねる
(下佐野町 川崎 英雄) - まごむすめ いきなし肩に 乗る重み
(岩鼻町 門倉 まさる)
(敬称略)
お便り紹介
「伊達直人いきなしやって来た善意」自分も少額ですが、たまにユニセフに寄付しています。ニュースをきっかけに、少しでもいいので、誰もが本名で寄付ができる世の中になると良いですね。(中里見町の中里見富康さん)
『だらに』【1月1日号】
今月のお題「だらに」は、「ひっきりなし・止めどなく・延々と」という意味のおらほうの言葉です。
どちらかといえば、否定的な意味合いで使われているようで、応募の川柳も、食べて太る、就職難が続くといった句が寄せられました。
「だらに」だけではなく「だらっぺし」「だらっぴし」といったおらほうの言葉が使われることもあるようです。
- だらに食べ いつの間にやら 二段腹
(下佐野町 川崎 和美) - 宴仕切り だらに突っつく 鍋奉行
(北久保町 根本 丈男) - 言いわけし だらに時間を つぶす奴
(稲荷町 新倉 勇) - だらに鳴る 着メロ除夜の 鐘を消す
(倉賀野町 田村 佐和子) - 就職難 だらに続いて 春遠い
(萩原町 土田 千恵子) - 掛け声が だらに飛び交う 酉の市
(飯塚町 小野寺 アイ) - 年重ね だらにおしゃべり 孫自慢
(吉井町池 鈴木 もと)
(敬称略)
お便り紹介
「だらにかく いびき眠れず 咳ばらい」旅先の宿で、合い部屋の人のいびきで眠れないとき、ゴホンと咳ばらいをすると、しばらくいびきが止まる様を詠んでみました。(福島町の島村千代治さん)
『つっとす・つっさす・つっとさす』【12月1日号】
今月のお題「つっとす・つっさす・つっとさす」は、「突き刺す」という意味のおらほうの言葉です。
最初の「つ」の後に小さい「っ」が付くことで、おらほうの言葉らしい歯切れ良さが、ぐっと出てきますね。
- 針穴に つっとす糸が 太く見え
(福島町 島村 千代治) - お医者様 注射つっさす 仏顔
(下室田町 関 芳江) - 逃げまわる おでんの卵 つっとさす
(中泉町 横山 博之) - キューピーの 矢につっとされ 恋に落ち
(下滝町 天田 勝元) - にっこりと 微笑む薔薇に つっとされ
(上中居町 善如寺 英夫) - 大掃除 つっさす快感 古障子
(下豊岡町 福田 裕彦) - 幼子が かんざしつっさし 気取り顔
(中豊岡町 花岡 盛太郎)
(敬称略)
お便り紹介
「煮えたかな つっとし過ぎて 型崩れ」煮物を作るとき、つい何回もつっとして、野菜に穴が空き崩れてしまいます。見た目の悪いこと、たびたびです。(和田多中町の花形尚子さん)
「蜂の巣を つっとし逆に つっ刺され」農家育ちの私が少年だったときのこと。いたずらで蜂の巣を棒でつっとしたところ、反対に鼻を刺されました。痛い思い出の一つです。(和田多中町の黒澤繁さん)
『ふんごくる』【11月1日号】
今月のお題「ふんごくる」は、「踏み込む」という意味のおらほうの言葉です。
自転車に乗るときなどに使われますが、普通に「自転車をこぐ」より「自転車をふんごくる」の方が一生懸命にこいでいる様子が伝わりますよね。
- からっ風 負けずにペダル ふんごくる
(上大類町 新井 京子) - ふんごくる コタツの中の 足喧嘩
(下佐野町 川崎 英雄) - 脱穀機 リズムにのって ふんごくる
(八幡町 梅村 ヨシ子) - 枝束ね ふんごくっては 縄を〆め
(上中居町 冨所 弘之) - ふんごくる 力衰え 老いを知り
(八幡町 須田 美千代) - 農大生 今日もこの坂 ふんごくる
(寺尾町 真舘 久) - 三輪車 ふんごくる孫に 追いつけず
(矢島町 永井 美子)
(敬称略)
お便り紹介
「遅れそう 夢中でペダル ふんごくる」今から60年前、高校の期末試験の朝のことです。卒業後も何回か夢にみて飛び起きました。(上中居町の善如寺英夫さん)
「風呂沸かす 桑の根っ子を ふんごくる」若いころは蚕を飼って生活の助けにしていました。残った桑の根を足でふんごくって燃やし、お風呂を沸かしたことを懐かしく思い出しました。(浜尻町の湯浅茂子さん)
『わがんま』【10月1日号】
今月のお題「わがんま」は、そのまま「わがまま」という意味のおらほうの言葉です。会話の中でもよく使われるおらほうの言葉ですよね。
今回は、孫が話すかわいいわがんまから、夫の許せないわがんままで、さまざまな句が寄せられました。
- わがんまの わが親にして わたしあり
(倉賀野町 高田 喜久雄) - わがんまを 通せた頃が 花だった
(八幡町 梅村 ヨシ子) - わがんまも もってく娘の 角隠し
(八幡町 須田 美千代) - わがんまを 仕切り直して 新国技
(和田多中町 黒沢 繁) - 嘘ばれて わがんま亭主 皿洗う
(矢島町 永井 美子) - わがんまが 高じて増えた 皮下脂肪
(萩原町 上田 千恵子) - わがんまも 聞かなくなって ふと寂し
(下滝町 天田 勝元)
(敬称略)
お便り紹介
「わがんまも やんわりきたか 成長期」成長期の孫の言葉が、毎日毎日成長していることに驚くと同時に、会話も楽しんでいます。(下豊岡町の岡田賢六さん)
「お切り込み わがんま通って 卵のる」終戦後の食糧難の時代、お切り込みはごちそうでした。そんな中おふくろが貴重品の卵をそーっとのせてくれた。大事な思い出のひとつです。(江木町の茂木富男さん)
『ほとばす』【9月1日号】
今月のお題「ほとばす」は、「水に浸す・漬ける」という意味のおらほうの言葉です。
今回は、もち米やスイカ、切り干し大根、大豆といった食べ物についての作品が多く寄せられました。
- 孫生まれ 餅米ほとばす 爺と婆
(倉賀野町 山崎 清) - 洗い物 ほとばしみんな 知らん振り
(倉賀野町 田村 佐和子) - 合格の 餅米ほとばし 知らせ待つ
(中尾町 林 茜) - 湧水に ほとばすトマト 丸かじり
(八幡町 梅村 ヨシ子) - 井戸水に 西瓜ほとばし 孫まだか
(倉賀野町 田村 勲) - なべ焦がし そっとほとばす 妻の留守
(新町 清水 紀子) - ほとばして 太った豆が おごっそう
(下滝町 天田 勝元)
(敬称略)
お便り紹介
「ほとばした 大豆で作る てめえ味噌」毎年自分でみそを作っています。人に配るときは、私が作ったみそだからおいしいよ、と自慢して差し上げています。どうに作るの、と聞かれるので、まずは大豆をほとばして・・・となります。(若田町の塚越あい子さん)
「餅米を ほとばし十八番の 御赤飯」最近あまり耳にしなかったので何だか懐かしいです。高崎も地域が広がり知らない言葉もありますが、ほとばすはよく耳にしました。(住吉町の小林玲子さん)
『○○りー』【8月1日号】
今月のお題「りー」は、「食べりー」「帰りー」のように、動詞にくっついて「~してください」「~しませんか」「~しなさい」などの意味で使われています。
- そこすわりー これ食べりーと もてなされ
(日光町 田中 友) - もう寝りー こども寝付かぬ 祭りの夜
(下滝町 天田 勝元) - 大玉の 西瓜切ったよ 集りー
(飯塚町 小野寺 アイ) - 食べりーに メタボ気になり つい遠慮
(江木町 茂木 暘子) - 食べりーが 何よりもてなし 老ひし母
(上中居町 枝窪 俊夫) - もう帰りー かじる脛など ありゃぁせん
(井野町 引田 敦子) - 上がりーな お茶一杯も 飲んでぎな
(通町 湯島 英夫)
(敬称略)
お便り紹介
「朝起きて 早くしりーが クセとなり」。子育て中から子どもたちにせっついては言っていました。せっかちな私は今でも「早くしりー」が抜けません。(棟高町の石井節子さん)
「他県から 来て聞く『りー』の あたたかさ」。私は41年前、就職のため栃木から新卒で群馬に来ました。不安いっぱいで過ごしていたとき、周りの人たちが「これ食べりー」と誘ってくれました。その言葉の温かさにホッとしたものです。(中尾町の林篤子さん)
『うでる』【7月1日号】
今月のお題「うでる」は「ゆでる」という意味のおらほうの言葉です。
- うでるにも 今は小さな 鍋ばかり
(岩鼻町 門倉 まさる) - ばあさんの うでるうどんの 手際よさ
(新町 新井 豊作) - 温暖化 地球をうでる CO2
(中里見町 中里見 富康) - 涼求め そうめんうでて 汗をかき
(江木町 柳澤 英子) - ほうれん草 うでる妻の腕 たくましく
(矢島町 永井 善治) - 新ジャガの 堀りたてうでて 舌鼓
(高浜町 新野 幸子) - うで過ぎも 新米主婦の ご愛嬌
(倉賀野町 田村 佐和子)
(敬称略)
お便り紹介
「黒板に うでると書いて 注意され」。若き日、授業が終わって職員室に戻ると、国語専攻の教頭先生に呼び止められました。「板書の『うでる』って何?」。廊下で通りがかりに見たとのこと。正しくは『ゆでる』でしょうが、児童の発言をそのまま書いたのか、自分が言って書いたのか、記憶は定かではありませんと答えた記憶があります。47年前の事を思い出しました。(中泉町の染谷悦子さん)
「モロコシを 一気にうでる 喰い盛り」。幼いころの思い出です。兄弟6人でモロコシを焼く間も待てないで、大釜でゆでてかじりつきました(吉井町吉井川の増茂千嘉子さん)。
『ほきる』【6月1日号】
今月のお題「ほきる」は「伸びる・成長する」という意味のおらほうの言葉です。
- ずんずんと 竹の子ほきて 背比べ
(新町 清水 紀子) - 幼き日 ほきた麦田で かくれんぼ
(萩原町 土田 千恵子) - 雑草の ように貯金も ほきればね
(中里見町 中里見 富康) - 踊ってる ほきる麦穂と 春の風
(寺尾町 真舘 久) - 庭の草 ほきて亭主の 仕事でき
(下滝町 天田 勝元) - 孫ほきて 肩に片寄る ランドセル
(倉賀野町 田村 勲) - 会う度に ほきる孫らの 頼もしさ
(福島町 浅見 健司)
(敬称略)
お便り紹介
「何食べて こんなにほきたと 祖父見上げ」。小さい祖父に大きい孫。今の子どもは栄養が良いためか、祖父、父を抜いて見上げるように大きくなります。それが祖父にはうれしくてならないようです(台新田町の下條政子さん)。
「雨降って ほきる草取り 痛む腰」。野菜作りを始めて今年で3年目になります。自分で作る野菜に消毒はせず、肥料は最小限ですので、とてもおいしく食しています。時季は「草もほきる」ので、草取りがとってもつらくなります(吉井町池の鈴木もとさん)。
『ぬるまったい』【5月1日号】
今月のお題「ぬるまったい」は「ぬるい」という意味のおらほうの言葉です。
熱いものが冷めてしまったときだけでなく、冷たいものが温まってしまったときにも使います。
- ぬるまったい ビール気になる 式次第
(倉賀野町 田村 佐和子) - 孫となら ぬるまったい風呂 我慢する
(下滝町 天田 勝元) - 寝坊して 頂くみそ汁 ぬるまったい
(飯塚町 小野寺 アイ) - ぬるまったい 茶を飲み干して さあ仕事
(聖石町 小林 千美) - ぬるまったい 薫風を孕んで 鯉泳ぐ
(八幡原町 原田 晴弥) - ぬるまったい 風呂で汗だし ダイエット
(新町 清水 紀子) - 熱いお茶 注いで忘れて ぬるまったい
(根小屋町 後閑 八重子)
(敬称略)
お便り紹介
「ぬるまったい 風に誘われ 草を引き」。今までの寒さでは庭先の草取りもままならぬ状態でしたが、昨日今日のぬるみに草をむしる気になりました(我峰町の斉藤文江さん)。
2年程前に銀婚式を迎えましたが、熱くもなく冷たくもなく、子どもにも手が離れてちょうど居心地のいいころあいです。「銀婚式 夫婦の仲は ぬるまったい」(吉井町小暮の金井朋枝さん)。
『やっこい』【4月1日号】
今月のお題「やっこい」は「やわらかい」という意味のおらほうの言葉です。
- 耳朶の やっこさに捏ね 草だんご
(吉井町上奥平 金井 阿津美) - 愛情を こめてやっこく 介護食
(新町 清水 紀子) - うたた寝を 起こすやっこい ひ孫の手
(芝塚町 杉本 美津子) - 古希近し やっこい食に 手が伸びる
(井野町 竹内 朝子) - やっこいな ひ孫ほっぺた ほおずりし
(寺尾町 真舘 久) - ごはん炊く やっこいこわいで もめている
(萩原町 土田 千恵子) - 初掘りの 筍頂き やっこいね
(飯塚町 小野寺 アイ)
(敬称略)
お便り紹介
「やっこいと 感じた妻の手 今いずこ」。今は妻の手を握ることもありませんが、改めて握ってみれば、カサカサのごわごわでした(福島町の浅見健司さん)。
「亡き夫 今日のすいとん やっこいな」。夫は昨年12月に自宅で亡くなりました。亡くなる前は3日に1度はすいとんやうどん。私はあまり好きではないけど、夫に合わせていました。1人になってあまり食事が取れません。でも今夜はすいとんにして食べてみようと思います(倉賀野町の高井恵子さん)。