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平成11年度のお題
『ちっかっぽい』【9月1日号】
- 組んだ手を 空にかざして ちっかっぽい
(寺尾町 坂梨 大) - ちっかっぽい 思い出します コマまわし
(稲荷町 新倉 勇) - ちっかっぽい べいごま ビー玉 光る袖
(貝沢町 関 堅吉)
(敬称略)
グー(石)、チョキ(はさみ)、パー(紙)で勝負を競うジャンケンの呼び方の一つ。高崎周辺では、その他にチッケッタ、チッカンペなどを使う地域もある。
いずれも「おにごっこ」の鬼決めや「べいごま」の順番などを決める際に使われた。また、チッカッキュウというのもあり、親指(カエル)、人差し指(ヘビ)、小指(ナメクジ)を出すもので、主に男子の間で使われた。
最近では、「最初はグー、ジャンケン ポイ」が多く使われているようである。
『べぇ・だんべぇ』【10月1日号】
- 俺ん家へ 嫁に来ねいか いいだんべぇ
(沖町 中島 隆司) - まち行くべぇ ここも町だと 孫は云い
(上小塙町 内田 栄一) - だんべぇも 出て投合す くにの友
(倉賀野町 外山 忠夫)
(敬称略)
「べぇ」は、「行くべぇ=行こう」「そうすべぇ=そうしよう」のように意志を表すときや「行くべぇや」の『や』を省略して「行くべぇ=行こうよ」のように勧誘を表すときなどに使われます。また、「雨べぇ=雨ばかり」「食くってべぇ=食べてばかり」のように限定を表すときにも使われます。
「だんべぇ」は、標準語の「~でしょう」と同様で、使われ方によって意味が変わり、推量や断定、相手の同意を求めるときに使われます。
『こ一時間』【11月1日号】
- こ一時間 待たせてふられた 十九の春
(八幡町 梅村 ヨシ子) - 世が世では 婆も化粧に こ一時間
(乗附町 高橋 アサ子) - こ一時間 待って診察 約五分
(上大類町 新井 京子)
(敬称略)
本市周辺で、当たり前のように使われている「こ一時間」ですが、転入者や本市を初めて訪れた人にとって、「一時間」に「こ」を付ける表現が耳慣れないために、違和感を感じたり、意味が分からなかったりするそうです。「こ一時間」の「こ」は漢字で「小」と書き、接頭語でおよその意味を表します。小一日というと一日に満たない場合を意味しますが、「こ一時間」の場合、半日ぐらいを意味している人もいるとか・・・。
『ふてる・ぶちゃる』【12月1日号】
- 宝くじ 当たればぶちゃろう 我が亭主
(大八木町 須藤 幸子) - ふてないで 案山子の着替えに とっておき
(上大類町 新井 宏) - 片しても ぶちゃるものなく もとのまま
(石原町 金子 春雄)
(敬称略)
「ふてる・ぶちゃる」は「捨てる」という意味で使われます。語源は、星野光儀さんの著書によると源氏物語の一節「かいなを枕にて、うちやられる御ぐしの、いと長くこちたくはあらねど」に出てくる「打ち遣る」から派生した言葉と推定しています。
年末の大掃除に、しまい込んだものを思い切ってぶちゃろうと考えている人も少なくないはず。ごみとしてぶちゃる前に、バザーやフリーマーケットなどのリサイクルを考えてみては。
『ずで』【1月1日号】
- ずで弱し 昔一升 今一合
(西横手町 小林 文雄) - 反抗期 ずで言うことを 聞かぬ時期
(上大類町 松本 節子) - ずでだめだ ホールインワンも 夢の夢
(江木町 柳澤 英子)
(敬称略)
今回のお題「ずで」は、「ずで駄目だった」「ずで釣れなかった」など、他の言葉を強調する言葉で「まったく」「残念ながら」の意味で使われます。結果が思わしくなく、否定的な場合に使われることが多いのが特徴です。
都丸十九一さんの著書によると、「ずで」は、県内各地で使われていますが、地域によって意味する内容が違っている言葉。吾妻町では「遺憾ながら」、沼田市では「案外」、渋川市では「ほとんど」という意味で使われるそうです。
『おおか』【2月1日号】
- おおかいて 全然見えぬ 初日の出
(倉賀野町 青柳 完治) - Y2K おおか騒いで 損したな
(貝沢町 荻原 啓子) - カタカナ語 おおか並んで 意味不明
(石原町 永井 百合子)
(敬称略)
「おおかミカンを食べ過ぎると足が黄色くなるぞ」など、「おおか」は、限度を超えていることを表します。量や数が多いときばかりでなく、「おおか痛いんで歯医者に診てもらったら、虫歯だった」「おおか寒くてこたつから離れられない」など「とても」の意味で使われることもあります。
また、相手のささいな間違いに対して「おおか嘘をつくなよ」と言う場合には、間違いの頻度が多いのではなく、嘘の質が度を超していることを表します。
『はあて』【3月1日号】
- はあて舞い 雪だるま待つ 孫三っつ
(小八木町 高橋 久江) - うす日さす 庭ではあての 乱れ舞い
(上大類町 新井 宏) - はあて舞い 厚底よちよち ヘッピリ腰
(江木町 柳澤 英子)
(敬称略)
今回のお題「はあて」は、風花のことで、風の強い晴れた日に舞ってくる雪や、風でちぎれた雪雲が通り雨のように降らす雪のことです。「風花」の俗称には、「はあて」と「ふっこし」という言葉が県内にあります。分布を見ると、「はあて」は、箕郷町、高崎市、富岡市あたりを境に西側の地域で使われ、「ふっこし」は、主に勢多郡あたりで使われています。榛名山と妙義山の間を越えてくるのが「はあて」で、赤城山を越えてくるのが「ふっこし」ということでしょうか。