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平成16年度のお題

ページID:0006046 更新日:2023年12月18日更新 印刷ページ表示

『くれる』【3月1日号】

  • くれる娘の ドレス踏んでる 男親
    (上佐野町 長井 惠)
  • 病気して 薬は馬に くれるほど
    (聖石町 小林 千美)
  • 物よりも 愛をくれると 妻に言う
    (北久保町 根本 丈男)
  • くれた娘を 今も案ずる 老ふたり
    (上佐野町 小山 英雄)

(敬称略)

他県の人が最も用法に悩むのがこの「くれる」だといいます。「くれる」は「娘を嫁にくれる」や「植木に水をくれる」などのように「やる・あげる」の意味で使われていますが、一般には「こんなものくれてやる」のように、ちょっと乱暴な、あまりありがたくないニュアンスでとらえられるようです。さらに言えば「あの人は良くしてくれる」のように、自分が人から、何かしてもらうことを指すことが多く、花に水をやる行為は標準的には「水やり」であり「水くれ」とは言いません。

『いきあう』【2月1日号】

  • 久し振り 行き会う友の 名が出ない
    (飯塚町 中村 豊雄)
  • 常のごと 夢に行き会う 母やさし
    (中尾町 深沢 アヤ子)
  • 行き会うた 思い出語る 共白髪
    (佐野窪町 須川 定良)
  • 行き会って あいそこぼされ はて誰や
    (上中居町 吉成 浜子)

(敬称略)

「行き会う」は、「いきあう」と発音し、出先でばったり誰かと会ったことを表します。「きのうな、まちに行ったら先生に行き会ったんさー」のように使います。
「ゆきあう」という読み方で辞書にも載っていますから、一見標準語のようですが、他県人によると「その場合、単に『会う』とか『出会う』って言うんじゃないの」と、「行き会う」にはかなり違和感があるようです。とはいえ、万葉集や伊勢物語にも「行き逢ひて」と登場する、由緒あるおらほうの言葉です。

『てんで』【1月1日号】

  • てんでいい 晴れ着すがたの 孫むすめ
    (山名町 黒澤 輝美)
  • てんで駄目 それでももしやと くじを買い
    (上中居町 吉成 浜子)
  • ピカソの絵 おれにはてんで わからねえ
    (聖石町 小林 千美)
  • なまの文字 てんで少ない 年賀状
    (金井淵町 真塩 康雄)

(敬称略)

「てんで」は、打消や否定的な意味の語を伴って「まったく」とか「まるきり」の意味で「てんで駄目」のように使われます。
また、打消の語を伴わないで「とても・非常に」の意味で「てんで具合がいい」などのようにも使われます。
同じ「てんで」でも「それぞれ」の意味で使うのが主流の地方もあり、越後地方では「てんで持ち」といえば「割り勘」のことを言います。群馬では「てんでん」と「ん」をつけて言うことが多いですね。

『じゅーく』【12月1日号】

  • 電話口 日増しにじゅーく 孫の声
    (阿久津町 山口 ノブヱ)
  • 保育園 じゅーくも風邪も 持ち帰る
    (八幡町 梅村 ヨシ子)
  • 子の意見 じゅーく言うなと 聞かぬ父
    (上佐野町 小山 英雄)
  • じゅーく言ふ 孫にじじばば 笑いこけ
    (高砂町 井田宗佑)

(敬称略)

「じゅーく」は、「生意気」とか「おしゃまな」という意味で使われます。「おじゅーく」とも言います。
幼い子が「おしゃまな」ことを言うと「この子は、おじゅーくだね」と、大人たちは目を細めてくれます。
中学生くらいになって「生意気」なことを言うと「じゅーくばかり言うんじゃない」と、大人たちは怒り出します。

『ずら』【11月1日号】

  • ダイエーも 西武も野球 ずらあねえ
    (聖石町 小林 千美)
  • くたびれた 連休ずらない 孫の世話
    (上小塙町 内田 栄一)
  • 鶏を 笑うずらない 物忘れ
    (萩原町 土田 千恵子)
  • 大いびき 眠るずらない 旅の宿
    (岩鼻町 門倉 まさる)

(敬称略)

「ずら」といえば静岡や松本の方言として有名ですが、おらほうの「ずら」は、ちょっと意味が違います。
静岡の「ずら」は、語尾にくっついて「~だろう」という推量の助動詞として使われます。「そう言ったずら」は「そう言ったでしょう」の意味です。上州弁の「だんべえ」に近い言葉です。
おらほうの「ずら」は、ほとんどの場合、「ない」を伴って「~ずらねえ」と使われます。「~どころではない」という強い否定を意味します。越後長岡でもこれと同じ用法で「~ずらねえ」が使われています。

『おこんじょ』(その1)【10月1日号】

  • 運動会 おこんじょ雨が 邪魔をする
    (飯塚町 中村 豊雄)
  • おこんじょで 気を引く淡い 恋心
    (北久保町 根本 丈男)
  • 弟は おこんじょされても ついて行く
    (南大類町 新後閑 よう子)
  • 好きだった おこんじょされても 好きだった
    (岩鼻町 門倉 まさる)

(敬称略)

「おこんじょ」は「意地悪」という意味の方言です。
主に群馬の西毛地域でよく使われ、東毛ではあまり使われないようです。
方言界では全国的に有名な言葉らしく、各地の方言を集めたインターネットのホームページに、群馬弁代表として顔を出しています。それだけに投句数も多く、九十九句をいただきました。
ちなみに岡山県では「おこんじょ」といえば魚の「オニオコゼ」のことです。

『まーず』(その2)【9月1日号】

  • ニセ温泉 まーずがっくり 効き目なし
    (片岡町三丁目 木内 和)
  • お年寄り まーず元気で 玉を打ち
    (萩原町 土田 千恵子)
  • この夏は まーず暑くて 長かった
    (上大類町 新井 京子)
  • ネオンより まーずきれいな 虫の声
    (中尾町 深沢 アヤ子)

(敬称略)

標準語で「まず」は「まっさきに・ともかく」の意味や、「まず間違いない」のように「おおよそ」の意味です。上州で「まーず」といえば「とても」に近い意味で、「まーず暑いんさね」のように形容詞を強調する言葉になります。
ある大工が、施主が出してくれたお茶がおいしかったので「このお茶は、まーず、いいお茶だいのー」とほめたところ、県外出身の施主は「まずいお茶だ」と言われたのだと思い、気分を悪くしたとのこと。いかにも「おらほうの言葉」らしいこのエピソードを紹介したくて「まーず」をお題にしました。

『かんます』(その1)【8月1日号】

  • かんますな 怒る親父は 鍋奉行
    (上小塙町 内田 栄一)
  • 定年で ぬか床かんます 主夫となり
    (片岡町 金井 よし子)
  • おもちゃ箱 かんまし見つけた お気に入り
    (石原町 本多 郁恵)
  • 金魚鉢 かんます孫に 猫笑い
    (寺尾町 真舘 久)

(敬称略)

「かんます」は「かき混ぜる・かき回す」という意味で使われます。信州や会津などの地方でも使われています。
以前、テレビの料理番組で、下仁田町出身の元アイドルが、共演者に向かって「郁恵さん、それ、かんましてください」と言ってしまったことがあります。「郁恵さん」は意味が分からず、キョトンとしていましたが、テレビからふと飛び出したおらほうの言葉、何となくうれしい気分です。

『まじっぺえ』【7月1日号】

  • まじっぺえ 宝石よりも 子の笑顔
    (中尾町 深澤 アヤ子)
  • 夏の海 波と水着が まじっぺえ
    (上佐野町 小山 順子)
  • まじっぺえ じっと我慢で ハイチーズ
    (元島名町 佐藤 政子)
  • いたずらの 鏡照らされ まじっぺえ
    (佐野窪町 須川 定良)

(敬称略)

「まじっぺえ」は「まぶしい」という意味の方言です。
佐久や会津などでも使われていますが、群馬の中毛地域では「ひずりい」と言う人もいます。
現代語では「マジ」は「本当」という意味で使われるのが一般的です。
「おらほう」でない人にとって「マジっぽい」は「本当らしい」という意味になってしまいます。
「まじっぺえ」を使う際には、ご注意を・・・。

『ちっとんべ』【6月1日号】

  • ちっとんべ 姉の意地出せ ハルウララ
    (江木町 柳澤 英子)
  • こつこつと 貯んだ利息は ちっとんべ
    (八幡町 梅村 ヨシ子)
  • あんこ煮る 塩ちっとんべが 味をきめ
    (中尾町 金井 ノブエ)
  • 死ぬ思い 減らした体重 ちっとんべ
    (下小塙町 金井 良江)

(敬称略)

「ちっとんべ」は「ちっとんばい」とも言い、「少し」の意味の「ちっと」と「~ばかり」の意味の「ばい」がくっついた言葉です。なから少ないことを言い、直訳すると「すこしばかり」です。
おすそ分けのときなどは「少しばかりですが」ともらうよりも「ちっとんべだけど」と出されたほうが温かい感じがしますね。逆に、もらった人が「こんなちっとんべ」と言うと、とてもきつく感じるから不思議です。

『つぐ日・つぐ朝』【5月1日号】

  • 食べきれぬ おかずはつぐ日の 膳にのせ
    (萩原町 土田 千恵子)
  • 春の雨 つぐ日にょきにょき 蕨でる
    (住吉町 小林 玲子)
  • つぐ朝も つぐ日も待てど 手紙来ず
    (岩鼻町 門倉 まさる)
  • 美味美味と ほめればつぐ日 同じもの
    (飯塚町 中村 豊雄)

(敬称略)

「つぐ日・つぐ朝」は、「次の日・次の朝」の意味で使われます。
地元では、「そりゃあ標準語だんべえ」と思うくらい、当たり前に使われている言葉です。東京での学生時代、普通に「つぐ日」と言ったところ、友人たちから「それは何語だ」と言われ、初めておらほうの言葉だと気付いたくらいです。

『おてのこぶ』【4月1日号】

  • 蕗味噌や おてのこぶにも 春をのせ
    (上中居町 吉成 浜子)
  • 小さな手 二つ並べて おてのこぶ
    (日高町 岡田 幸)
  • 赤飯も 一味ちがう おてのこぶ
    (阿久津町 山口 ノブヱ)
  • 旅先で 朝市歩き おてのこぶ
    (山名町 山田 澄子)

(敬称略)

「おてのこぶ」は、「おてのこぼ」ともいい、手のひらを軽く曲げたときにできるくぼみのことで、「手のくぼ」が変化した言葉です。総菜やおこわを少しだけもらうときに、お皿の代わりに使います。本市と群馬町では「おてのこぼ」が使われますが、それ以外の西毛地区では「おてのくぼ」が使われているようです。