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特別インタビュー 指出一正さん (3)
イワナのいる地域か、タナゴのいる地域に住みたい
−高崎市に住んで東京に通勤するとか、あるいは高崎市に住んでリモートワークを兼ねるなどビジネスパーソンの居住地として、高崎市の立ち位置をどうご覧になっていますか。
リニア中央新幹線が走り出すと、都市と都市の間は縮まっていき、「高崎は東京から遠い」という言葉はなくなります。しかもリモートワークが進展していったら、通勤という概念がガラッと変わっていきます。通勤を何のためにしているかと言えば、より良い仕事をするためで、通勤のために人生を送っているわけではありません。都内に通勤することも近いし、それから通勤しなくても豊かな生活を送れて、良い仕事のできるビジネスパーソンが増えることが大事なので、高崎市は優位なポジションにあると思います。
−将来、指出さんは高崎市にUターンされるプランをお持ちでしょうか。
よく「指出さんは、一体どこに住みたいんですか?」という質問を受けますが、答えははっきりしています。「イワナのいる地域か、タナゴのいる地域に住みたい」と。森の魚と田んぼの魚をかろうじて大事にできている地域は、まだ日本に複数カ所あって、行くたびに地域の豊かさが現出しているなと思います。その地域を20代・30代の人達が好んでくれているんですね。400年続く味噌醤油蔵があって、そこに若い人が後を継ぐために戻ってきてくれて、おしゃれな空間にリノベーションして。
イワナがいるとか、タナゴがいる場所は、豊かな森が残っているか、美しい水が残っている場所か、あるいは美味しい野菜が採れる肥沃な土のある場所です。そういう場所で暮らしたいとは思いますね。
現実を見れば、僕の世代は親の介護が問題になってきています。僕は父親と母親が高崎で幸せに暮らせるために、やれることをやりたいと考えていて、この1~2年、それまでよりも高崎にいる時間が増えたんですね。日帰りで行って、父親と母親と御飯を食べてくるとか。僕の中では移住かどうかよりも、どのくらい尊敬する人や好きな人といるかが大事なことですが、高崎には父親と母親というかけがえのない存在がいるので、このライフステージの中で高崎にいる時間が自然に増えています。
もうひとつ、僕が高崎にいなくても、僕がいる雰囲気をつくればいいと考えていて、空いている空間とか空いている土地を借りて、高崎や群馬の皆が楽しいと思う場所をつくってみたいという気持ちがあります。
−本日は示唆にあふれたお話をうかがいました。ありがとうございました。
インタビュー・文 小野貴史
『ソトコト』編集長。1969年群馬県生まれ。上智大学法学部国際関係法学科卒業。雑誌『Outdoor』編集部、『Rod and Reel』編集長を経て、現職。著書に『ぼくらは地方で幸せを見つける』(ポプラ新書)。BS朝日「バトンタッチ SDGsはじめてます」監修。上毛新聞「オピニオン21」委員。趣味はフライフィッシング。
ソトコトオンライン www.sotokoto-online.jp<外部リンク>
政府の各種委員会や地方自治体のプロジェクトに数多く関わる。以下、参照。
- 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部「わくわく地方生活実現会議」委員
- 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部「人材組織の育成・関係人口に関する検討会」委員
- 内閣官房「水循環の推進に関する有識者会議」委員
- 内閣官房「ふるさと活性化支援チーム」委員
- 内閣官房水循環アドバイザー
- 総務省「過疎地域自立活性化優良事例表彰委員会」委員
- 経済産業省「2025年大阪・関西万博日本館」クリエイター
- 国土交通省「ライフスタイルの多様化と関係人口に関する懇談会」委員
- 農林水産省「新しい農村政策の在り方検討会」委員
- 環境省「SDGs人材育成研修事業検討委員会」委員
- UR都市機構URまちづくり支援専門家
- 林野庁「森林空間を活用した教育イノベーション検討委員会」委員
- 秋田県湯沢市「ゆざわローカルアカデミー」メイン講師
- 福島県郡山市「こおりやま街の学校」学校長
- 栃木県宇都宮市「カマクリ協議会」委員
- 群馬県「群馬県過疎有識者会議」委員
- 富山県「くらしたい国、富山」推進本部本部員
- 富山県「とやまつながるラボ」監修
- 静岡県「『地域のお店』デザイン表彰」審査委員長
- 和歌山県田辺市「たなコトアカデミー」メイン講師
- 奈良県「奥大和で会いましょう。」企画監修
- 奈良県「SUSTAINABLE DESIGN SCHOOL」メイン講師
- 岡山県真庭市政策アドバイザー
- 島根県「しまコトアカデミー」メイン講師