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自然を染める コブナグサ
コブナグサ(イネ科)
全国の山野、湿った草地、田のあぜ、道端などに生える高さ20~50センチの一年草。葉は長さ2~6センチの長卵形で先はとがり、縁に毛がある。葉の基部は心形で完全に茎を抱く。秋、茎の先に長さ3~5センチの紫褐色か白緑色の小穂を付ける。
説明
ブナグサの名は、葉の形が鮒に似ていることから小鮒草と名づけられました。同じイネ科のカリヤスとともに、古くから黄色染料として使われてきたことから、別名「八丈刈安」とも呼ばれます。
伊豆諸島の八丈島には、黄色の縞や格子模様が美しい「黄八丈」の織物があります。黄八丈は、コブナグサをせんじた汁「黄煎汁(きぶし)」に糸を繰り返し浸して染め、ツバキの灰汁(あく)に漬けて発色させることによって、輝くような特有の黄金色に染まります。このように繰り返し染めることで、孫や、ひ孫の代まで色が変わらないと言われます。
黄八丈の着物は、古くは武家大名や大奥の女中、裕福な町人などの間で愛好されていました。江戸時代後期には、庶民の手にも入るようになり、歌舞伎芝居「八百屋お七」の娘役などの衣装に用いられたことで大流行しました。当時の人気は大変なもので、江戸中の女性たちの、目の色が変わるほどだったと伝えられています。
コブナグサから作る染料は、穂が出始めたころの茎葉を使います。みょうばんなどのアルミ媒染で黄色、鉄媒染でオリーブ色が染められます。
黄八丈の織物