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学芸員のつぶやき(2021年度)

ページID:0002323 更新日:2024年5月20日更新 印刷ページ表示

収蔵作品展「5つの部屋+I」学芸員によるギャラリートーク「井上房一郎の部屋」開催のご報告 2022年3月19日

本日は開催中の収蔵作品展「5つの部屋+I 多彩なコレクションで巡る高崎市美術館30年のあゆみ」関連事業としまして、「学芸員によるギャラリートーク」の第6回目「井上房一郎の部屋 井上房一郎の美意識」を開催しました。

美術館の展示室ではなく、敷地内の旧井上房一郎邸の居間でのトーク開催。参加者の皆様には、居間の椅子にお座りいただき、旧井上房一郎邸の雰囲気を満喫しながらご参加いただきました。

旧井上房一郎邸でのギャラリートークの様子

「5つの部屋+I」の「I」は、旧井上房一郎邸、井上房一郎の「I」です。井上は高崎の事業家で、高崎・群馬の文化・芸術の振興に尽力し、芸術家たちのパトロン的存在、と、いつも説明させていただいています。今回のトークでは、多様な分野に精通した井上の「美意識」に着目してお話いたしました。

1898年生まれの井上は、1923年、25歳で渡仏し、アカデミー・コラロッシ、アカデミー・ドゥ・ラ・グランドショミエールで絵画、彫刻を学びました。滞仏中の1925年にパリで開催された「現代装飾美術産業美術国際博覧会」、通称アール・デコ展に衝撃を受け、建築、工芸へも関心を広げました。1929年に帰国後は、家具、織物を中心に工芸デザインの指導に取り組み、1934年にブルーノ・タウトと知り合うと、高崎に招いて協働し、地域産業の発展に貢献しました。

旧井上邸からも、井上の美意識を感じ取ることができます。旧井上邸は、友人である建築家アントニン・レーモンドが1951年に東京麻布に建てた事務所兼自邸の、自邸部分を写し、1952年に竣工した建物です。レーモンド建築にはレーモンドの妻、ノエミがインテリアを担当しました。現在、麻布のレーモンド邸は取り壊されてしまいましたが、旧井上邸でレーモンド自邸を体感することができます。

レーモンド夫妻は、工業化によって同時代の多くの建築が目の前で人間らしさを失いつつあることに不満を抱き、建築に再び「落ち着きと静謐さ、生活と喜びの雰囲気」を与えようと考えていた人たちでした。そして、過去の建築原理と現代の技術の両方を踏まえた静謐な優美さをそなえた建築、近代社会にふさわしい暮らしのかたちの創造を模索しました。レーモンド邸を写した井上も、そんなレーモンド夫妻に共鳴したからこそ、レーモンド邸を写すことを望んだのでしょう。
レーモンドは自然素材の美と精緻な職人仕事の内に単純さと真理を見出す、ということを建築において追求しました。旧井上邸も、シンプルで実用的な中に、柱や壁面の木材が温かさを生みだします。柱は、レーモンド邸では建築現場の足場丸太を転用しましたが、旧井上邸は県内の水沢地域(現渋川市伊香保町水沢)の杉林から厳選した質の良い杉丸太を使用するなど、旧井上邸には井上のこだわりも見られます。

これからご来館される方も、居間の椅子に腰かけ、井上の美意識を感じてみてはいかがでしょうか。

※現在旧井上邸は、美術館の開館日に準じて公開し、邸内は午前10時から11時、午後2時から4時にご見学いただけます。

収蔵作品展「5つの部屋+I」学芸員によるギャラリートーク「寄贈・寄託の部屋」開催のご報告 2022年3月13日

本日は開催中の収蔵作品展「5つの部屋+I 多彩なコレクションで巡る高崎市美術館30年のあゆみ」関連事業としまして、「学芸員によるギャラリートーク」の第5回目「寄贈・寄託の部屋 初出品作品を中心に」を開催しました。ギャラリートークでお話しした内容とあわせ、各展示室の出品作家もご紹介いたします。

第5展示室は「寄贈・寄託の部屋」と題し、近年ご寄贈・ご寄託いただいた作品を中心にご紹介しています。

第5展示室でのギャラリートークの様子

初出品作品をピックアップしてご紹介します。
まずはジョルジュ・ルオーの詩画集『流れる星のサーカス』(1938年刊)《3苦いレモン》、《11アーサー親方》(いずれも1935年制作)と『ミセレーレ』(1948年刊)《56 高慢と無信仰のこの暗き時代に、地の果てより聖母は見守る》(1927年制作)です。
ルオーは、生涯にわたり「サーカス」という主題を描き、ルオーが生涯に描いた作品のおよそ3分の1、約700点を占めるそう。『流れる星のサーカス』は、当館で以前より収蔵している1930年の『サーカス』を手直しして作られました。第3展示室「ヨーロッパの作家たちの部屋」で『サーカス』を展示中ということもあり、作風の変化を見比べて頂ける機会となりました。

次は、このルオーと関わりのある彫刻家、高田博厚の《海》(1962)です。高田は1931年31歳の時に渡仏し、1957年まで26年間滞在しました。その間、主にフランスの芸術家や著名人を訪ね肖像彫刻を制作しました。1957年、帰国し東京にアトリエを構え、1961年より裸婦の制作を始めます。《海》は、裸婦像最初期の代表的な作例となります。
高田は滞仏中の1936年にルオーを訪ねています。高田は実際に交友のある著名人の肖像彫刻を中心に制作しますが、1957年の帰国に際し、滞仏中の全作品、石膏原型に至るまですべてを破壊しています(既に収蔵になった作品等は除く)。帰国後、1970年代にルオーをモデルに木炭デッサン、ブロンズ像を制作しています。

最後に、三輪途道(みわ みちよ/上原三千代)さんの《寝たふりしている従者バクの屏風》(1998)をご紹介します。第2展示室「繋がっていく絆の部屋」でもご紹介中で、県立高崎女子高校在学中に美術教諭の井田秋雄(ときお)さんの指導を受けました。仏像彫刻に関心を持ち、東京造形大学で彫刻、東京藝術大学大学院で保存修復について学び、写実的な木彫作品の制作、重要文化財に関わる仕事にも携わっています。昨年夏の展覧会「メモリーズ」では家族など身近な人をモチーフにした人物表現の作品を展示しました。ほかに動物や野菜などをモチーフに制作しています。今回の展示作品はバクと屏風が一体化したような、写実表現だからこそユニークな作品です。近年は県内の寺社の地方仏、仏像彫刻を研究し、本を出版するなど、幅広い活動をされています。

各展示室で群馬・高崎ゆかりの作家をご紹介していますが、第5展示室でも三輪さんをはじめ、地域ゆかりの作家の作品を多数ご紹介しています。50音順でお名前を挙げさせて頂きます。
新井コー児、岡本健彦、島﨑庸夫、正田壤、深井隆、ましもゆき、町田久美、水野暁、三輪途道、山口薫(敬称略)

現役作家も多数ご紹介しています。現代の群馬・高崎の美術をご体感ください。

収蔵作品展「5つの部屋+I」出品作家によるギャラリートーク開催のご報告 2022年3月12日

本日は開催中の収蔵作品展「5つの部屋+I 多彩なコレクションで巡る高崎市美術館30年のあゆみ」関連事業、出品作家によるギャラリートークを開催しました。
本展覧会の出品作家によるギャラリートークは今回が最終回。高崎市出身の井田秋雄(ときお)さんにお話しいただきました。

井田秋雄さんギャラリートークの様子

トーク会場は第4展示室「前衛と革命の部屋」でしたが、井田さんの作品は第2展示室「繋がっていく絆の部屋」でも作品の展示があり、井田さんをはじめとする群馬の前衛作家たちの動きや、第2展示室でご紹介の井上房一郎との関わりなど、これまでの画業全般について振り返る内容となりました。

高崎・群馬の文化・芸術の振興に尽力し、芸術家たちのパトロン的存在だった事業家、井上房一朗は、母校高崎高校の生徒などから若い才能あふれる人材を見つけて美術の道へと背中を押しました。井田さんもその一人で、高崎高校3年生の時に井上から「美術学校に行きなさい」と声をかけられ、井上自ら井田さんのご両親の説得にもあたったそうです。

井上を通じて知った画家、木村忠太については、高崎周辺の若い芸術家たちは井上から「彼(木村)の作品を勉強しろ」と、作品やありようを紹介され、井田さんの周りで「木村忠太ブーム」が巻き起こったとか。

井上によって導かれ、様々な影響を受けながら歩んでこられた井田さんは、ご自身も県内の高校で美術教師として後進を育てられ、今回のギャラリートークには県立高崎女子高校の教え子の皆さんも駆けつけてくださいました。「繋がっていく絆」のテーマのように、先人たちから現代の作家たちへと繋がる絆を感じる、温かなトークとなりました。

井田さん、ご参加の皆様、誠にありがとうございました。

収蔵作品展「5つの部屋+I」出品作家によるギャラリートーク開催のご報告 2022年3月6日

本日は開催中の収蔵作品展「5つの部屋+I 多彩なコレクションで巡る高崎市美術館30年のあゆみ」出品作家で、高崎市出身の画家、新井コー児さんのギャラリートークを開催しました。

新井さんは、セーラー服姿の女子高生や木造の校舎、レコードなど、懐かしさ感じるものを、猫などの小動物とともにセピア色の画面にノスタルジックに表現する作風で知られます。
今回展示している《黄昏の四畳半》も、テーブルというよりちゃぶ台に、ギターを抱えて横になって眠る若い男性と、その周りにはレコードプレーヤーやレコードが配されるなど、古き良きあの頃を思わせる作品です。展示作品についての作品解説や、2004年から2010年に当館で開催した地域ゆかりの若手作家を紹介するシリーズ展「作家王国」での展示にまつわるエピソードなどをお話しいただきました。

新井コー児さんギャラリートークの様子

新井さんは2007年に、画家水野暁さんとの二人展という形で「作家王国」でご紹介しました。「作家王国」での展示以前は、東京の画廊での展示など、東京のほうに目を向ける事が多かったそうです。しかし「作家王国」での展示を機に、地元の画廊などから声をかけて頂く機会が増えたそうです。

また作品は、「懐かしい」というだけでなく、実は新井さんにとって「もう手に入れられないもの」「手に入れたいけどどうにもできないもの」などがよく描かれているそうです。女子高生を描くのは、ご自身が男子高校のご出身で、女子高生と接する機会がほとんどなかったからだそうです。高校時代に経験できなかったこと、大人になった今はもうあの頃には戻れない・・・、そんな思いが、懐かしい空気をまとった女子高生として画面に現れます。

新井さんの作品によく登場する猫は、猫アレルギーの新井さんには、近付きたいのに近付けない存在。また近作でたびたび描かれる海も、群馬は海なし県。釣りが趣味である新井さんにとって、近くにあったらいいのに・・・と思わせる遠い存在。猫や海は、新井さんの「自分ではどうすることもできないもの」へのもどかしさも含んで画面に描かれます。

トーク後半には参加者の皆さまからたくさんご質問をいただき、更には会場でお知り合いの作家さんからギター弾き語りのリクエストも!参加者の皆様の温かい拍手に包まれ、コンサート付きの和やかなギャラリートークになりました。

新井さん、ご参加の皆様、誠にありがとうございました。

収蔵作品展「5つの部屋+I」学芸員によるギャラリートーク「前衛と革命の部屋」開催のご報告 2022年3月5日

本日は関連事業「学芸員によるギャラリートーク」の第4回目「前衛と革命の部屋」を開催しました。ギャラリートークでお話しした内容とあわせ、各展示室の出品作家もご紹介いたします。

第4展示室は「前衛と革命の部屋」。靉嘔、瑛九、元永定正、難波田龍起、村井正誠などのアヴァンギャルドの作家たち、後半は中でも群馬ゆかりの作家である金子英彦、加藤アキラなどをご紹介しています。

高崎市ゆかりの山口薫と村井正誠、矢橋六郎の三人は、画学生時代からの友人でともに渡仏経験が有り、帰国後はモダンアート協会設立など前衛的な活動を行い「モダンアートの旗手」とも呼ばれます。今回のトークではまず抽象表現を追求した前衛作家の中から村井、山口長男、斎藤 義重についてピックアップしました。

第4展示室でのギャラリートークの様子

前衛表現の作品は、抽象的で「難しい」という声も度々聞かれます。作家自身がどのように制作に取り組んだかを知ることで、作品理解につながるケースがあります。村井は素朴で明快な力強い抽象表現で知られています。展示中の《鎧の人》は、誰もが見て人とわかるような描き方はされていません。しかし画面の大部分を占める黒色が、甲冑の持つ堅さや質感に繋がり、そこに人の存在を感じさせます。

また、「作品名」や、添えられた「作家略歴」から紐解き、作品への理解を深める事もできます。山口長男は、自身の出身である韓国のソウルや、戦時に釜山を訪れた経験から、広い「土地」のイメージに由来する作品名を付ける事があります。今回展示している《区》も、黄土色の色面に黒い線で区切られている様子と作品名が「土地」を連想させます。

斎藤はレリーフ的な作風から、電気ドリルを用いた作品へと変化します。《作品(赤)》は電気ドリルを無意識的に使い、自然に動く方向に任せて制作した作品です。主にシュルレアリスムの作家たちが取り組んだ手法である自動筆記に通じる方法であり、無意識下に人がどのように表現するかを追求しました。

後半の群馬ゆかりの作家からは、高崎ゆかりの井上八重子の作品についてお話ししました。井上の作品はフラメンコから着想を得ている事、また作家自身が好きな赤色をよく用いることなど、トークでは作品にまつわる作家のパーソナルな部分もご紹介しました。
共に前橋市拠点の群馬NOMOグループのメンバーで、「シャッター芸術」「標識絵画」の集団制作で知られる金子英彦と加藤アキラは、同時代に集った仲間でありながら、カラフルな色彩が特徴的な金子、様々な素材を用いる加藤と、異なる作品展開を見せます。ぜひ見比べて見てくださいね。

抽象表現は、ぱっと見ただけでは分かりにくいこともあるかもしれませんが、見方を変えれば、より作家の心の内に迫れる、作家と作品に近付くことのできる作品です。作品を通じて作家たちの想いを感じてみてくださいね。

収蔵作品展「5つの部屋+I」学芸員によるギャラリートーク「ヨーロッパの作家たちの部屋」開催のご報告 2022年2月26日

本日は関連事業「学芸員によるギャラリートーク」の第3回目「ヨーロッパの作家たちの部屋」を開催しました。ギャラリートークでお話しした内容とあわせ、各展示室の出品作家もご紹介いたします。

第3展示室では「ヨーロッパの作家たちの部屋」と題し、ヨーロッパの作家による絵画、立体、ガラス作品を展示しています。

当館の収蔵方針の一つに「地元ゆかりの作家の作品の収集」があり、高崎市出身の山口薫や鶴岡政男はじめ、現代の作家にいたるまで収蔵しておりますが、彼らに強い影響を与えた海外作家についても収集に努めています。
1991年の当館開館に向けて、最初に収蔵となった作品群の中に、山口薫が高崎の風景を描いた《観音の立つ山》があります。同じタイミングで収蔵となったのが、山口や世界中の芸術家たちに影響を与えた、スペイン出身の芸術家パブロ・ピカソの《フランコの夢と嘘》です。今回のギャラリートークは、この作品を中心に行いました。

第3展示室でのギャラリートークの様子

2枚組で、1枚が3×3=9マスに仕切られ、漫画のように描かれた版画作品です。この作品には、1937年1月8日、9日と、6月7日の日付が記載されています。この間の4月26日に、ピカソの代表作の一つ《ゲルニカ》に繋がる、ナチスドイツ軍によるスペイン・ゲルニカ爆撃が発生しました。

1937年のパリ万国博覧会に展示する作品を依頼されていたピカソは、爆撃の数日後から《ゲルニカ》の習作に取りかかり、約1ヶ月後には縦349センチメートル×横777センチメートルもの大作《ゲルニカ》を完成させ、7月12日のパリ万博のスペイン館完成の際にお披露目しています。

《フランコの夢と嘘》の、6月7日に制作されたと思われる終盤部分は、《ゲルニカ》完成直後に描かれたと考えられています。《ゲルニカ》に登場するモチーフや、その後ピカソが追求していく「泣く女」につながるモチーフが見られます。ぜひ、探してみてくださいね。

このほか、キュビスムの表現が見られるようになる以前の《貧しき食事》(1904年、1913年刷)、キュビスムの表現で描かれた《首飾りをつけたジャクリーヌの肖像》(1959年)の合わせて3点のピカソ作品を展示しており、作風の変化をご覧いただけます。

第3展示室では、エコール・ド・パリの作家であるジョルジュ・ブラック、マルク・シャガール、フェルナン・レジェ、マリー・ローランサン、藤田嗣治、ジョアン・ミロや、ジョルジュ・ルオー、ヘンリー・ムアの絵画作品、オシップ・ザツキンの立体作品、合わせてチェコの現代ガラス作品も紹介しています。日本の作家に影響を与え続けるヨーロッパの作家たちの作品を、ぜひお楽しみください。

収蔵作品展「5つの部屋+I」出品作家によるギャラリートーク開催のご報告 2022年2月12日

本日は開催中の収蔵作品展「5つの部屋+I 多彩なコレクションで巡る高崎市美術館30年のあゆみ」出品作家で、高崎市出身の画家、泉澤守さんのギャラリートークを開催しました。

本展覧会では第2展示室の「繋がっていく絆の部屋」、第4展示室の「前衛と革命の部屋」でご紹介しており、ギャラリートークは第2展示室で展示している《幼生記─愛─》(1983)の前で開催しました。
泉澤さんは事業家井上房一郎との出会いをきっかけに高校時代に初個展を開催し、多摩美術大学油彩科に入学され、在学中は版画制作などにも取り組まれます。その後、作家人生に多大な影響を与えたのが結婚だったとのこと。とくに二人の娘の父として、子守をしながら制作する中で、絵のモチーフが自然と幼少期のお子様たちになったそうです。

泉澤守さんギャラリートークの様子

1981年頃から「幼生記」シリーズを連作されますが、今回のギャラリートークに合わせ、《幼生記─晶─》(1983)という作品もご持参いただきました。《幼生記─愛─》は長女、《幼生記─晶─》は次女をモチーフに描かれており、《幼生記─晶─》誕生の背景には、学生時代に井上房一郎邸でみた鶴岡政男のパステル画《香り》が影響しているそうです。(本展覧会の同じく第2展示室にて油彩の《香り》を展示しています。)

ご参加の皆さんは、《幼生記─晶─》と《香り》、《幼生記─愛─》を見くらべながら、熱心に耳を傾けていらっしゃいました。

また、山口薫は、泉澤さんに影響を与え続けている画家の一人です。大学進学前に井上を通じて山口に会い、デッサンをみてもらった際の、山口のとてもきれいな瞳と「デッサンはそこにあるように描くんだ」と言われた言葉が今も忘れられないそうです。その後山口の作品を観るたび、山口の作品に対する印象が変化していることに気付き、自身が時と共に変化してきたのだと気付かされたそうです。

トークでは第4展示室で展示している《風景》(1996)についてもご紹介くださるなど、時間の許す限り、泉澤さんのこれまでの制作やゆかりの方々について、興味深いエピソードをたくさんお話しくださいました。

泉澤さん、ご参加の皆様、誠にありがとうございました。

今後もトークイベントを予定しております。詳細は展覧会ページをご覧ください。
5つの部屋+I 多彩なコレクションで巡る高崎市美術館30年のあゆみ

収蔵作品展「5つの部屋+I」学芸員によるギャラリートーク「繋がっていく絆の部屋」開催のご報告 2022年2月6日

本日は関連事業「学芸員によるギャラリートーク」の第2回目「繋がっていく絆の部屋」を開催しました。ギャラリートークでお話しした内容とあわせ、各展示室の出品作家もご紹介いたします。

第2展示室では「繋がっていく絆の部屋」と題し、高崎・群馬ゆかりの作家による大きく分けて二つの絆にまつわる作品群を展示しています。

一つは、1月30日の学芸員によるギャラリートークでもご紹介した高崎市出身の画家山口薫や、高崎・群馬の文化・芸術の振興に尽力した事業家井上房一郎に関連した、地域ゆかりの作家たちの絆。先輩から後輩へと続く絆をご紹介します。

山口は母校高崎中学校(現・群馬県立高崎高等学校)の2年後輩の松本忠義、豊田一男と展覧会や写生会、野外制作を共にした仲間でした。山口・松本・豊田より約20歳若い正田壤は松本に師事、また山口の上北沢のアトリエに通うなど、師弟の絆が繋がれていきます。

一方、フランス留学経験を持つ井上は、帰国後、若手芸術家の支援者・パトロンとして、若い才能を見出し導いていきます。田中朝庸、石澤久夫、井田秋雄、佐藤晃一、泉澤守らは、井上を通じて山口など他の先輩芸術家を知り刺激を受けたり、展覧会の機会を得るなど、井上から芸術家としての歩みの背中を押されました。井田は、群馬県立高崎女子高等学校教諭となり、教え子の彫刻家三輪途道、版画家長野順子、画家渡辺香奈を導きました。

第2展示室でのギャラリートークの様子

もう一つの絆は、高崎市出身の鶴岡政男を中心とした仲間たちの絆。太平洋画会研究所や新人画会、自由美術家協会、近所の茶房りゝおむなどで育まれた交友の輪から、井上長三郎、大野五郎、糸園和三郎、寺田政明、麻生三郎、吉井忠、木内克をご紹介しています。

鶴岡らが1943年に結成した「新人画会」は、翌年までわずか3回ながら、戦時下に純粋な制作発表を続け、のちに「戦後美術の起点」とされました。徴兵経験や空襲による作品焼失、仲間の病没など、戦前戦後それぞれに喪失体験を抱えながら、交流を続け、切磋琢磨して自分の表現を追求しました。

第2展示室では、最年長で1892年生まれの木内克から若手作家の渡辺香奈まで、様々な世代の作家の作品をご紹介しています。作品を通して、現代に繋がる作家たちの絆をぜひ感じてみてください。

収蔵作品展「5つの部屋+I」出品作家によるギャラリートーク開催のご報告 2022年2月5日

本日は開催中の収蔵作品展「5つの部屋+I 多彩なコレクションで巡る高崎市美術館30年のあゆみ」出品作家で、高崎市出身の彫刻家、吉田光正さんのギャラリートークを開催しました。

本展覧会では第1展示室の「ふるさとの作家たち」のお一人としてご紹介しています。武蔵野美術大学油彩科に入学された吉田さんですが、学生時代に国立西洋美術館へ彫刻デッサンに通っていた経験などから彫刻へと関心を向け、「石の彫刻の魅力を伝えたい」という思いで石彫作家へと転身されたそうです。

吉田光正さんギャラリートークの様子

群馬県は冬場の乾燥した北風「からっ風」が有名ですが、吉田さんはその「からっ風」をテーマに、北風に立ち向かう人の姿と現代社会に立ち向かって生きる人間像とを重ね合わせ、多くの作品を制作し続けてこられました。

本展覧会でご紹介している作品は《休息》。この「風」をテーマにした作品を経て、「休んでいるもの、ゆったり横たわっている姿をテーマにしたい」というお気持ちで制作されたとのこと。鑑賞者の顔がほころぶような、ごろんと気持ちよさそうに人が横たわっている作品です。是非会場でご確認くださいね。

吉田さんはトークのために、この《休息》の、テラコッタによるエスキースをご持参下さいました。普段目にすることのない、作品の「ひな形」を前に、参加者の皆さんも興味津々のご様子でした。

ほかにも沢山の写真資料などで、主に素材として用いるインド砂岩についてや制作過程、また近年の活動など、幅広くお話しいただきました。
吉田さん、ご参加の皆様、誠にありがとうございました。

今後もトークイベントを予定しております。詳細は展覧会ページをご覧ください。

5つの部屋+I 多彩なコレクションで巡る高崎市美術館30年のあゆみ

収蔵作品展「5つの部屋+I」学芸員によるギャラリートーク「ふるさとの作家たちの部屋」開催のご報告 2022年1月30日

開催中の収蔵作品展「5つの部屋+I 多彩なコレクションで巡る高崎市美術館30年のあゆみ」では、展示室毎にテーマを設けて展示しており、関連事業「学芸員によるギャラリートーク」で各テーマの作品・作家をご紹介します。本日はその第1回目「ふるさとの作家たちの部屋」を開催しました。
この「学芸員のつぶやき」では、ギャラリートークでお話しした内容とあわせ、各展示室の出品作家をご紹介していきます。

第1展示室では「ふるさとの作家達の部屋」と題し、高崎・群馬ゆかりの作家の作品を展示しています。

高崎市出身の画家で当館の収蔵作品の核とも言えるのが、共に1907年生まれの山口 薫と鶴岡 政男です。

第1展示室でのトークの様子

山口薫は1930年渡仏し、美術の最先端パリでキュビスムなど様々な新しい美術表現を広く吸収し、帰国後は後輩達にも伝えていきました。抽象と具象のはざまで独自の表現を追求し、人物や動物、故郷の風景など、身近なモチーフを好み、緑・朱・黒を中心とした色で描いています。

鶴岡政男は、終戦後人々が重いものに圧迫されながら必死に生きようとしている姿を描いた《重い手》(国立近代美術館所蔵)で知られ、戦後の日本洋画界を兼任した画家の一人です。画風は変化を見せても、一貫して時代・社会を見つめ、ユーモラスな形体での表現を追求しました。

第1展示室ではほかにも高崎ゆかりの作家として、共に山口の後輩にあたり、動物を数多く描きのちにシュールな作風へと展開をみせた松本忠義、環境破壊など社会的テーマを扱う豊田一男や、中村節也・小倉ポオ・島崎庸夫の油彩、吉田光正・中島浩・和南城孝志・分部順治の立体作品を展示しています。

続いて群馬の作家で、まずご紹介したのは画家の福沢一郎です。富岡市出身の福沢は、渡仏経験から、人間の無意識の中にあるものを引っ張りだし真実をあぶりだすシュルレアリスムの表現へと向かい「日本初の本格的なシュルレアリスムの紹介者」と言われています。

長野県出身で桐生市に移住したオノサト・トシノブは、主に丸をモチーフに純粋な抽象を追求した前衛的な画家です。一方、大阪府出身で安中市にアトリエを構えた山名將夫は、女性像を多く描いた写実の画家で、パネルの木目を背景にし、木目の「現実」と描かれた女性の「非現実」を行ったり来たりするような表現を試みています。

このほか前橋市を拠点に活動する画家金井訓志・前橋市出身の画家清水刀根の作品を展示しています。

トークは約30分で、駆け足でのご紹介となりましたが、本展覧会では他の展示室でも高崎・群馬ゆかりの作家の作品をご紹介しています。ギャラリートークや、この「学芸員のつぶやき」でも、引き続きご紹介していきます。

収蔵作品展「5つの部屋+I」開催中&出品作家によるギャラリートーク開催のご報告 2022年1月23日

1月15日(土曜日)より、収蔵作品展「5つの部屋+I 多彩なコレクションで巡る高崎市美術館30年のあゆみ」が始まりました!ご来館のお客様からは「こんなに幅広い作品を収蔵されているんですね」とお声をいただいております。サブタイトルのとおり「多彩なコレクション」をご紹介する展覧会です。ぜひご来館ください。

さて、1月23日(日曜日)は、出品作家によるギャラリートークを開催しました。今回講師を務めて頂いたのは、画家の金井訓志さんです。金井さんは群馬ゆかりの作家で、前橋市を拠点に活動されています。
本展覧会で展示している作品《アブラムの丘》(1995)の前で、出品作品の制作にまつわるエピソードや、これまでの歩みをお話し頂きました。

金井訓志さんギャラリートークの様子

《アブラムの丘》のような、渡欧経験から生まれた石膏や金箔を用いた当時の作品から、現在は鮮やかな色彩の花の作品など、様々な作風を展開されてきた金井さん。一つのことを突き詰めていくと、やがて、別の新たなことを試してみたくなるそうです。
その基本軸には、デッサンを大切にする姿勢があり、デッサンについて「基礎的な美術の目を養う」とお話しされました。トーク中には学生時代のデッサン作品など、これまでの作品から近作までを、画像を用いながらご紹介頂きました。

最後の質疑応答ではたくさんのご質問に真摯にご対応いただき、終始和やかなトークとなりました。
金井さん、ご参加の皆様、誠にありがとうございました。

会期中は今後もトークイベントを予定しております。詳細は展覧会ページをご覧ください。

5つの部屋+I 多彩なコレクションで巡る高崎市美術館30年のあゆみ

「5つの部屋+I」準備中です! 2021年12月27日

「版画でめぐる印象派とその時代」展は、12月26日(日曜日)に最終日を迎えました。
翌日27日(月曜日)より、次の収蔵作品展「5つの部屋+I」の準備が始まり、早速美術館入り口上の看板が「5つの部屋+I」バージョンに!

5つの部屋+I美術館入り口上看板

「5つの部屋+I」では、5つの展示室を「ふるさとの作家の部屋」「繋がっていく絆の部屋」「ヨーロッパの作家たちの部屋」「前衛と革命の部屋」「寄贈・寄託の部屋」のテーマで巡り、絵画・版画や彫刻作品、ガラス造形など当館の多彩なコレクションをご紹介します。
今回のメインビジュアルに使用している作品は、それぞれの展示室でご紹介する作品から選んでいます。

また、「+I(アイ)」=美術館併設の旧井上房一郎邸の主であり、高崎・群馬の芸術・文化の振興に尽力した井上房一郎の美意識についても資料でご紹介します。

会期中は出品作家によるギャラリートークも多数開催予定です。
最新情報をHP、Twitterでご確認の上、ぜひご来館ください。

5つの部屋+I 多彩なコレクションで巡る高崎市美術館30年のあゆみ

なお、12月28日(火曜日)~1月14日(金曜日)は年末年始・展示替えのため休館になります。
収蔵作品展「5つの部屋+I」は1月15日(土曜日)から始まります。お楽しみに!

学芸員によるギャラリートーク「ゴーギャンの大冒険」開催のご報告 2021年12月19日

開催中の「版画でめぐる印象派とその時代」展も、残すところ1週間。
本日は最後の関連事業、学芸員によるギャラリートーク「ゴーギャンの大冒険」を開催しました。

今回を入れて3回行った学芸員によるギャラリートークですが、じつは毎回ご紹介してきた画家がいます。
《オランピア》《草上の昼食》《笛を吹く少年》で知られるエドゥアール・マネです。

ギャラリートークの様子の画像1
マネは、裸婦を女神ではなく現実の女性におきかえて描いたことにより、スキャンダラスな画家として同時代の人々から注目されましたが、写真の登場により絵画表現の危機を感じ、また日本の浮世絵に接したことも影響して、新しい絵画表現を追求した革新的な画家でした。

今回のトークのメインテーマとなったゴーギャンもまた、新しい表現を模索した画家の一人です。「北斎漫画」を所有していたことも知られているゴーギャンは、塗りつぶされた色面での背景表現を試みたり、空間を切り取るのではなく限られた画面の中での自律した絵画表現を追求するなど、日本の浮世絵の影響を強く感じさせます。

ギャラリートークの様子の画像2
やがてタヒチに移住すると、原始的な美を描くようになります。本展で紹介している《ナヴェ・ナヴェ・フェヌア(かぐわしき大地)》は、「タヒチにおける無垢なイヴを描いた」と自身で語っています。

タヒチで人生の幕を閉じたゴーギャンですが、パリに生まれ幼年期をペルーで過ごすなど、様々な国を訪れ異国の文化に触れ、独自の絵画を模索し続けた生涯でした。生前の評価は決して高いとは言えませんでしたが、19世紀から20世紀の絵画への転換点の重要な画家として注目され、今なお多くの作家に影響を与えています。

のこりわずかな会期となりましたが、ぜひ巨匠たちの版画作品を間近でお楽しみください。

ワークショップ「もしや模写?オリジナルフレームを作ろう」作品展示のご報告 2021年12月7日

本日12月7日(日曜日)より、美術館1階でワークショップ「もしや模写?オリジナルフレームを作ろう」で制作した作品の展示が始まりました。
陽に透けた色とりどりの作品達はまるでステンドグラスのようです。

ワークショップ作品展示

展覧会と併せてワークショップの作品展示も是非ご覧ください!

11月14日(日曜日)に開催したワークショップ「もしや模写?オリジナルフレームを作ろう」の様子はこちらでご紹介しています!(ワークショップ「もしや模写?オリジナルフレームを作ろう」開催のご報告 2021年11月14日)

「版画でめぐる印象派とその時代」は12月26日(日曜日)まで。
暖かい格好でお越しくださいね。

学芸員によるギャラリートーク「ルノワールとセザンヌーヒト派とモノ派」開催のご報告 2021年12月5日

本日は「版画でめぐる印象派とその時代」展の関連事業と致しまして、第1・2・3展示室にて学芸員によるギャラリートーク「ルノワールとセザンヌーヒト派とモノ派」を開催しました。

本展覧会では19世紀ヨーロッパで新しい美術表現を追求したマネやミレー、ルノワール、セザンヌ、ゴーギャンら著名な画家の版画作品を紹介していますが、トークでは、油彩の代表作を数多く残している彼らがなぜ版画作品にも取り組んだのか解説しました。

ギャラリートークの様子の画像3

ミレーの代表作《種まく人》の、本展で紹介している版画作品は、版画制作以前・以後に油彩作品が描かれています。版画制作は、最初に描いた油彩からその後の油彩作品をより理想の作品とするべく切磋琢磨するための過程であると考えられます。

一方、作者の意志により制作された版画作品だけではなく、購入者の要望に応える形で制作された版画作品もあります。印象派絵画の人気が高まると、特に富裕層の間で作品を手元に置きたいという需要がうまれ、当時複製技術として一般的に用いられた版画によって名画のイメージの複製が行われることもありました。

ギャラリートークの様子の画像4

モネに端を発する印象派の中で、ルノワールやセザンヌは独自の絵画表現を模索していきます。会場でぜひ豊かな版画表現をご覧ください。

関連事業のお知らせ

学芸員によるギャラリートーク

  • 日時:12月19日(日曜日)午後2時~30分程度 「ゴーギャンの大冒険」
  • 講師:当館学芸員
  • 会場:高崎市美術館
  • 定員:各回10名(予約先着順)
  • 参加費:要観覧料
  • 申込み:高崎市美術館(027-324-6125)にて電話予約受付中

学芸員によるギャラリートーク「マネって印象派?それとも?」開催のご報告 2021年11月23日

本日は「版画でめぐる印象派とその時代」展の関連事業と致しまして、展示室にて学芸員によるギャラリートーク「マネって印象派?それとも?」を開催しました。

本展覧会で紹介している作家の一人、エドゥアール・マネは、《草上の昼食》《笛を吹く少年》などで知られる19世紀のフランスの画家です。
ギャラリートークでは、マネの活躍した時代の美術の動きから、マネが影響を受けた作家、印象派の画家との比較などをご紹介しました。

ギャラリートークの様子の画像5

マネは、これまで女神として描かれた裸婦を現実の女性におきかえるなど、しばしばスキャンダラスな表現で同時代の人々から注目を集めていました。
また、これまで西洋絵画で描かれてきた奥行きのある背景表現においても、日本の浮世絵や写真の普及などの影響から、新たな表現を追求するようになります。
油彩では塗りつぶして表現した背景を、版画では銅版画の技法の一つであるアクアチントを用いて、質感をも感じられる表現で描くなど、マネの試みが随所に見られます。

ギャラリートークの様子の画像6

印象派の画家たちは、目で見える光や色を写し取り画面に表現することを追求しましたが、マネは造形的な部分を追求した画家と言えます。
同時代にお互いに影響しあっていたことは間違いないですが、目指した表現は、印象派の画家たちとマネとでは違っていたようです。

本展覧会では、何度も版を作り直すなど版画においても造形表現を追求したマネや、ルノワールなど印象派の画家たちの版画が一堂に会し、見比べてお楽しみいただけますので、ぜひじっくりご覧くださいね。

関連事業のお知らせ

学芸員によるギャラリートーク

  • 日時:いずれも午後2時~30分程度
    • 12月5日(日曜日)「ルノワールとセザンヌーヒト派とモノ派」
    • 12月19日(日曜日)「ゴーギャンの大冒険」
  • 講師:当館学芸員
  • 会場:高崎市美術館
  • 定員:各回10名(予約先着順)
  • 参加費:要観覧料
  • 申込み:高崎市美術館(027-324-6125)にて電話予約受付中

ワークショップ「もしや模写?オリジナルフレームを作ろう」開催のご報告 2021年11月14日

「版画でめぐる印象派とその時代」展の関連事業と致しまして、本日はワークショップ「もしや模写?オリジナルフレームを作ろう」を開催しました。

講師は群馬県立女子大学准教授の奥西麻由子さんです。

奥西麻由子さん

今回のワークショップは、展示室の作品の中から好きなモチーフを選んで模写していただき、作品に対してより親しみを持っていただこうというもの。
約20分のレクチャーのあと、早速展示室へ。

展示室での模写の様子1展示室での模写の様子2

普段は展示室で模写していただく機会があまりありませんが、今日ご参加の皆さんはしっかり作品と向き合い、集中して描いていただけたご様子でした。

本日のワークショップは、展示室での模写まで。最終的に正方形のフレームを作るのですが、飾り付けなど仕上げは自宅で行っていただきます。
そして、来月初旬には、美術館内で展示の予定です。
一体、どのように仕上がるのでしょうか?

展示が始まりましたら、追ってご報告致しますのでお楽しみに!

「版画でめぐる印象派とその時代」展はじまりました! 2021年11月13日

本日より「版画でめぐる印象派とその時代―マネ、ルノワーからゴーギャンまで」が始まりました。
印象派をはじめとする新しい美術の潮流が次々と現れた19世紀ヨーロッパの画家たちによる、版画の革新的表現に迫る展示です。

版画でめぐる印象派とその時代展西口デッキ看板

こちらは高崎駅西口デッキの看板です。
メインビジュアルは印象派を代表する画家の一人、ルノワールのカラー・リトグラフ作品ですが、印象派以外のナビ派、象徴主義の画家など、近代ヨーロッパの様々な美術の動きをお楽しみいただける展示となっています。

会期中は担当学芸員によるギャラリートークも予定しています。
是非ご参加ください。

関連事業のお知らせ

学芸員によるギャラリートーク

  • 日時:いずれも午後2時~30分程度
    1. 11月23日(火曜日・祝日)「マネって印象派?それとも?」
    2. 12月5日(日曜日)「ルノワールとセザンヌーヒト派とモノ派」
    3. 12月19日(日曜日)「ゴーギャンの大冒険」
  • 講師:当館学芸員
  • 会場:高崎市美術館
  • 定員:各回10名(予約先着順)
  • 参加費:要観覧料
  • 申込み:高崎市美術館(027-324-6125)にて電話予約受付中

秋山泉さんのみじかい解説会&ワークショップ「蝋燭をみつめて描く」を開催しました! 2021年11月7日

「生誕130年記念 高島野十郎展 同時開催 特集展示 秋山泉」もとうとう最終日。
本日は秋山泉さんを迎え、午前中はみじかい解説会 第4回「みつめる秋山泉」、午後はワークショップ「蝋燭をみつめて描く」を開催しました。

みつめる秋山泉

みじかい解説会「みつめる秋山泉」は午前11時から30分間、3階第5展示室で10名様のご参加。
「野十郎さんの蠟燭は芯を省略して描いています。光を強調する効果では?」とご自分の蠟燭との違いなど、野十郎展の感想からスタート。続けて自作について解説していただきました。小さい作品で一か月かかることや、ほぼ365日描き続けていることなど、作品からうかがえるとおりの根気のいるお仕事ぶりに、驚きの声も。

ワークショップ「蝋燭をみつめて描く」は午後1時から4時まで、高崎市南公民館で15名様のご参加。

蝋燭1
秋山さんにお手本(描きかけの本物!)を見せていただき

蝋燭2
実際に蝋燭を灯してスケッチ

蝋燭3
スケッチやスマホで撮影した画像、秋山さんご持参の写真などを見てケント紙に描きます。
室内を暗くして描くので、蝋燭に照らされて静かな時間が流れていきます…

蝋燭4
3時間で力作が完成!参加者の皆さま同士で感想や質問を交わします。
「こんなに集中して、こんなに描きこんでくださるとは思いませんでした!」と秋山さんの講評をいただき、記念撮影。秋山さん、ご参加の皆さま、ありがとうございました!

これにて「生誕130年記念 高島野十郎展 同時開催 特集展示 秋山泉」無事終了いたしました。

みじかい解説会 第3回「みつめる野十郎」を開催しました! 2021年11月6日

みじかい解説会 第3回「みつめる野十郎」が11月6日(土曜日)に開催され、計13名様にご参加いただきました。

みつめる野十郎
今回は物をみつめ、人をみつめ、風景をみつめ、最後に光と闇をみつめた野十郎のまなざしについて。
「第一印象から最後の印象までのすべてを捉えたい」(野十郎)と連作した静物や、風景に描きこまれる子供や母子像に、描く野十郎の微笑と詩心を想像したり、蝋燭や太陽、月の連作に、光そのもの、闇そのものをみつめ「写実の極致、やるせない人間の息づき― それを慈悲といふ」(野十郎)と記す心境を辿りました。

今回もダイジェスト版の解説動画、解説シートを公開しますので、どうぞご覧ください。

《れんげ草》と《雪晴れ》推定取材地の続報が届きました! 2021年10月26日

10月20日のつぶやきでご紹介した長野県在住の山下康一さんから、さらに《れんげ草》と《雪晴れ》
の推定取材地写真の続報が届きました!

《れんげ草》の画像1
《れんげ草》

《れんげ草》(10月20日のつぶやき掲載)推定取材地。北アルプスの稜線が絵のままの画像
《れんげ草》(10月20日のつぶやき掲載)推定取材地。北アルプスの稜線が絵のまま!

「安曇野市明科の水道施設南西から撮影しました。レンゲソウは昭和40年代まではどこでも植えていたと聞きます。かつての春の安曇野は一面ピンク色だったそうです。」
(山下さん記)

続いて…
《雪晴れ》の画像
《雪晴れ》

《雪晴れ》推定取材地の画像
《雪晴れ》推定取材地。

「安曇野市明科七貴上押野から。ヒントは右端の東山の形でした。中央に左から爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳、五龍岳、唐松岳ですが、作品ではこの中で唐松岳がかなり大きく描かれています。
迫力を出すために大きく描いたのではと想像します。」
(山下さん記)

《山の夕月》取材地、埼玉県秩父市三峯と最後のアトリエ跡地、千葉県柏市増尾は訪ねましたが、新型コロナ感染症拡大で、長野県はもちろん、都内の取材地さえまだ訪ねていません。
これを機に「聖地巡礼」の旅に出たくなりました。山下さん、ありがとうございました!

みじかい解説会 第2回「旅する野十郎」を開催しました! 2021年10月23日

昨夜の「金曜夜の学芸員ギャラリートーク」は申込キャンセルにより中止となってしまいましたが、気を取り直し、みじかい解説会 第2回「旅する野十郎」が10月23日(土曜日)に開催され、計10名様にご参加いただきました。

旅する野十郎
昭和に入りヨーロッパを訪ねたり、全国各地を旅する中で、自然に心をゆだね、澄んだ空気を描くようになる野十郎の気づきを、滞欧作や《雨の奥利根》(群馬県利根郡)、《流》(秩父三峯)、故郷に近い《春の海》(有明海)などから紹介しました。没年の《山径》に「冥土への一路、芸術の真諦」という本人の言葉を重ね、野十郎の人生を旅から振り返り、しっとりした気持ちに…。

ダイジェスト版の解説動画、解説シートを公開しておりますので、どうぞご覧ください!

野十郎《れんげ草》《雪晴れ》の取材地を教えていただきました! 2021年10月20日

「生誕130年記念 高島野十郎展」では、野十郎作品の取材地をご紹介する「高島野十郎 人生と絵画の旅」を、2階渡り廊下で紹介しています。
旅地図年表
アトリエの場所や旅の記録、作品取材地を、年表と地図でご覧いただけます。

この度来館された長野県在住の山下康一さんから《れんげ草》取材地についてさらにくわしい情報を教えていただきました!

《れんげ草》の画像2
《れんげ草》

北アルプス
山下さんからいただいた、松本市内から北アルプスを望む写真です。
山の稜線を見比べてください。

「針木岳は北へ行くと右隣の蓮華岳に隠れてしまい、南でも左隣の餓鬼岳に隠れて見えないので、この写真の視線の先で描かれた可能性が高いと思われます。」
(山下さん記)

一年を通して北アルプスをみつめ、写生しているという山下さんならではのくわしい情報です。
2階第3展示室の《れんげ草》と一つ挟んだ左隣の《雪晴れ》にも、鍬ノ峰が描かれており、
山下さんによれば描いた場所は「長野県池田町会染、安曇野市穂高、安曇野市豊科のどこか」だそうです。

私もよくツーリングするなじみの場所!作品がとても身近に感じられます。
貴重な情報をありがとうございました!

美術館で俳句を!「みつめる先の一句」入選句発表! 2021年10月17日

2019年度の「月の光にさわる句会」、2020年度の「時代への花束へ一句」に続き、俳句inミュージアム第3弾の「みつめる先の一句」
9月5日(日曜日)から10月10日(日曜日)の投句期間に、前回を越える126句の投句があり、俳人、水野真由美さんに選ばれた優秀賞5句、佳作賞10句が会場で発表されました!

それでは入選句をご紹介します。前回と同じく水野さんが選んだ順ですよ!

優秀賞

  • 近づきて孤独浄土のからすうり
    永井 貴美子さん
  • 美術館に授乳室あり秋真昼
    齋木 由紀子さん
  • 秋の灯に照らされて行く一人でも
    さまたよしみさん
  • 夜明けの地平烏瓜の息遣い
    斎藤 仁美さん
  • 後の月イーゼルにある小さき錆
    植原 ツギ子さん

続きまして…

佳作賞

  • 百年の雪わらぶきに降りしきる
    唐沢 民さん
  • 一筆を元素のように運ぶ空
    中田 久美子さん
  • 真っ直に菜の花真っ直な君
    松岡 良子さん
  • 指先に火の匂いして秋の雨
    佐藤 裕子さん
  • 自画像の野十郎にも秋日差し
    本田 攝子さん
  • 月明かり野十郎が見る我も見る
    清水 眞理さん
  • ろうそくに問われ無言の秋の庭
    大河原 愛子さん
  • 「不知題(だいしらず)」この世の果ての灯がゆれる
    佐川 愛実さん
  • 蝋燭は何も語らず水澄めり
    齋木 敬史さん
  • 眼裏(まなうら)に陽の残像のごと秋思
    大澤 徹也さん

野十郎作品や美術館での発見に、心動かされる名句ぞろい!

入選句掲示
1階渡り廊下に掲示されています。(背景は野十郎の《月》から)

入選句配布
水野さんの選評「うごきだす言葉たち」掲載の入選句発表チラシも配布していますよ。
少しだけご紹介しましょう!

「見つめるという行為には眼に限らず感性をも含めた体中の全てが必要なのかもしれないと思う。そこから何が動き出すのかを俳句という詩型を通して探ってゆきたい。」

そんな思いを込めて選ばれた15句なのですね…
入選者の皆さま、投句いただきました皆さま、選者の水野さん、本当にありがとうございました!
それにしても美術館で俳句、楽しいですね!

みじかい解説会 第1回「めざめる野十郎」を開催しました! 2021年9月25日

「生誕130年記念 高島野十郎展」みじかい解説会 第1回「めざめる野十郎」が9月25日(土曜日)に開催され、計9名様にご参加いただきました。

めざめる野十郎トークの様子
100年前の大正時代、青年期を過ごした野十郎の《自画像》3点や、10代から30代にかけて変化する花を描く作品3点を30分で足早にご紹介。「次回に続く」ような締りのない終わり方ですみません。
しかし気をとりなおしてお知らせです。

みじかい解説会「めざめる野十郎」解説シートと、解説動画近日中にアップします!
解説シートは、今後、みじかい解説会各回の実施後に公開予定

解説動画は、

  1. 「めざめる野十郎」
  2. 「旅する野十郎」
  3. 「みつめる野十郎」(すべて当館学芸員)
  4. 「高島野十郎と福岡県立美術館40年の歩み」(福岡県立美術館学芸員 高山百合さん)
  5. 「みつめる秋山泉」(同時開催の特集展示画家、秋山泉さん)

すべて近日中に同時公開予定です。
今回の「めざめる野十郎」にご参加いただけなかった方は、ぜひ解説シートのダウンロードと解説動画の視聴をしてください!

さらに、みじかい解説会 第1~3回の内容を一気にお聞きいただける機会があります。それは…
金曜夜の学芸員ギャラリートーク。

関連事業のお知らせ

金曜夜の学芸員ギャラリートーク

  • 日時:10月22日(金曜日)午後6時30分~1時間程度
  • 会場:高崎市美術館
  • 対象:小学生~大人
  • 定員:15名様(予約先着順)
  • ご参加には美術館観覧料が必要です。

お申し込みは高崎市美術館(027-324-6125)まで!

「生誕130年記念 高島野十郎展」全国初巡回作品あります 2021年9月8日

全国を巡回し、高崎が最終の第5会場となる「生誕130年記念 高島野十郎展」。
「生まれ故郷の福岡県久留米市で新発見された作品を含む90点で」とご案内していますが、どれが新発見作品かといいますと、ポスターやチラシに掲載した《からすうり》です!

初巡回からすうり

2018年に発見され、翌年、福岡県立美術館で初公開されたばかりの《からすうり》。
没後5年経った1980年、故郷の福岡県立美術館が「発見」した高島 野十郎には、まだまだ新発見の作品があるのですね。
もちろん「生誕130年記念 高島野十郎展」が全国初巡回となる作品です。
ところで壁のタイトルの上にからすうりマークと5の番号が…

実は「生誕130年記念 高島野十郎展」高崎会場展示90点のうち、なんと!
20点が《からすうり》と同じく全国初巡回となる作品なのです!

初巡回のからすうりのマーク
会場配布の作品リストと、壁のからすうりマークで、20点をご紹介していますので、ぜひリストを手に、初巡回作品20点をお探し下さい!

俳句 in ミュージアム「みつめる先の一句」始まりました! 2021年9月7日

昨年度の「時代への花束」展以来、高崎市美術館で3度目となる俳句イベント、「みつめる先の一句」の投句募集が始まりました!

投句箱
投句箱は美術館内に2か所、1階渡り廊下とラウンジにあります。

「ここで感じたことを言葉でつかまえて下さい。」
とは、選句講評してくださる講師、水野真由美先生からのメッセージ。
投句期間は10月10日(日曜日)まで。
優秀賞5句、佳作10句の発表は10月17日(日曜日)に美術館内に掲示し、水野先生の講評とともに掲載したチラシを配布します。

関連事業のお知らせ

俳句 in ミュージアム第3弾「みつめる先の一句」

  • 投句期間:9月5日(日曜日)~10月10日(日曜日)
    ※投句用紙1枚につき2句まで。お1人様2回まで投句していただけます。
  • 選句発表:10月17日(日曜日)
    ※優秀賞5句、佳作10句を会場で掲示、配布します。
  • 講師:水野真由美(俳人、朝日新聞上毛俳壇選者)
  • 会場:高崎市美術館
  • 参加費:要観覧料

秋のひととき、美術館で絵画鑑賞と俳句を楽しんでみてはいかがでしょうか?

「生誕130年記念 高島野十郎展 同時開催 特集展示 秋山泉」開催! 2021年9月5日

秋雨に久々の晴れ間がちらほらのぞく9月5日(日曜日)、「生誕130年記念 高島野十郎展 同時開催 特集展示 秋山泉」が、晴れて開催初日を迎えました!

野十郎展サイン

美術館入口上サインは、秋らしい《からすうり》と野十郎自画像に。
「近づくべからず、親しむは魔業(まごう)。」は野十郎の言葉。

魔業(まごう)とは、みつめること、描くことに終わりがないこと。
そして生業(なりわい)ではなく、業の深い生き様を表すのでしょうか?

11月7日(日曜日)までの53日間、野十郎作品90点と、特集展示の秋山 泉作品6点が、皆さんのご来館をお待ちしています。

開催初日、朝一番で特集展示の現代作家、秋山泉さんが来館されました!

秋山泉さん来館

野十郎展に続き、3階第5展示室の最後に、「特集展示 秋山泉」鉛筆画6点が展示されています。そのうちの1点、《静物V》(2021年)の制作動画も放映中。
秋山さん、ご感想は?

「野十郎さんの《蠟燭》と同じ展示室に私のろうそくがあることが、信じられないし緊張します。
とてもうれしいです。」

11月7日(日曜日)には、秋山さんのワークショップを予定しています。

関連事業のお知らせ

アーティストワークショップ「蝋燭をみつめて描く」

  • 日時:11月7日(日曜日)午後1時~4時
  • 会場:高崎市南公民館
  • 対象:小学生~大人
  • ご用意いただくもの:30cm定規、鉛筆削り、蝋燭の写真など
    (写真は講師も用意いたします)
  • 定員:15名様(予約先着順、小学3年生以下は保護者同伴)
  • 参加費不要、展覧会観覧は美術館観覧料が必要です。

お申し込みは高崎市美術館(027-324-6125)まで!(お早めに)

「メモリーズ」展出品作家のインタビュー動画公開中 2021年7月29日

「メモリーズ」展開催中、館内ラウンジでは、出品作家のインタビュー動画を放映しています。

メモリーズ展中のラウンジの様子

今回、出品作家のうち、現役作家6名に「メモリーズ」展用にインタビューを行いました。

インタビュー動画公開作家

三輪途道(みわ・みちよ/1966-)
柳澤裕貴(やなぎさわ・ゆうき/1962-)
浅田政志(あさだ・まさし/1979-)
深井隆(ふかい・たかし/1951-)
長野順子(ながの・じゅんこ/1966-)
水野暁(みずの・あきら/1974-)

作家のアトリエを訪問したり、展示替え期間中に展示室内で収録したもので、各作家の近影をご覧いただけます。
また、こちらのインタビュー動画は、YouTube高崎市公式アカウントで公開しています。
展覧会のページに動画を貼っていますので、パソコンやスマートフォンなどで、ご自宅でもお楽しみください。

メモリーズ 写真、絵画、彫刻でたどる記憶の旅

「メモリーズ」展講演会開催のご報告 2021年6月26日

本日より「メモリーズ 写真、絵画、彫刻でたどる記憶の旅」展が始まりました!
本展覧会では、県内外のアーティストの作品から、”記憶”を核とする写真や、油彩・版画などの絵画、彫刻をご紹介し、作品に内包された記憶を紐解きます。

初日の本日は、出品作家の写真家・浅田政志さんによる講演会「ファミリーストーリー 浅田政志編」を開催しました。

講演会会場の様子

会場ではソーシャルディスタンスを考慮した座席配置や、終始換気を行うなど、感染対策を行いながら開催いたしました。

浅田さんは、いわゆるスナップ写真とは異なり、セットアップ写真(演出写真)という「その瞬間」を演出し作り上げて撮影する写真家です。家族をテーマとする作品を多く発表されており、昨年は浅田さんの写真集「浅田家」「アルバムのチカラ」が原案にもなった映画「浅田家!」(中野量太監督)が公開されて注目を集めました。
映画について「写真集を原案とする映画、というのを聞いたことがなかったので、できないのでは?と思っていた」そう。
公開になった映画は、実際にあったことを題材にした、フィクションの作品になっていたそうです。

浅田政志さんスライドを使った解説の様子

ご自身の家族を被写体にした写真集「浅田家」については、撮影候補地との交渉に関する苦労話やその中で生み出した交渉術、撮影時の現場での裏話などをお話しくださいました。完成をイメージして現場に向かっても、いざ撮影となるとその場で悩むこともあったそうですが、場所を提供してくださった方々にも意見を聞きアイディアを出し合い撮影したそう。

また、ご家族、特にご両親は、撮影を重ね展覧会を開催するようになると、お客様から声をかけられるようになり、次第にやりがいを感じるようになったそうですが、浅田さんいわく「一番の功労者はお兄ちゃん」とのこと。優しいお兄さんがいつも運転手となったり、アドバイスしてくれるそうで、浅田さんにとって頭が上がらない存在なのだとか。

ご自分の家族だけでなく、全国を飛び回り、全国のご家族の家族写真を撮り「みんな家族」というテーマで発表している浅田さん。最近では”お一人でも家族を感じられる写真を”との思いから、「私の家族」というシリーズも発表しています。今回の展覧会では「浅田家」「みんな家族」「私の家族」シリーズを中心に展示しています。

これから展示をご覧になる方へは「あまり各家族のエピソードは書いていませんが、間違っていてもいいから、そこに込めているものを感じてほしい」とメッセージをくださいました。

観ているこちらまで微笑んでしまうような写真、目頭が熱くなるような写真など、展示室で様々な写真をぜひご体感くださいね。

「心からのおくりもの」展終了、皆様からのメッセージご紹介 2021年6月13日

本日「心からのおくりもの」展が最終日を迎えました。
会期中、予定していた解説会が中止となるなど、楽しみにされていたお客様にはご迷惑をお掛けしました。

前回の「つぶやき」でご案内のとおり、全4回分の解説シートを「新収蔵・寄託作品公開 心からのおくりもの」展のページのトップに掲示しておりますので、解説会を楽しみにされていた方、また会場にお越しいただけなかった方もぜひご活用ください。

さて、今回の展覧会関連事業のひとつ、「心からのメッセージを」。
エントランスで行っていた、メッセージシールをご来館の皆様に貼っていただくコーナーです。
最終日、メッセージシールを貼っていただいたメインサインは・・・

最終日のメインサインの様子

計96名の方にご参加いただきました!
全体を見てみますと、文字の入っている部分はご遠慮されながら、お気に入りの作家の欄に貼ってくださる方が多かったようです。
作家宛のメッセージや展覧会の感想など、様々なメッセージをお寄せくださり、ありがとうございました。
今回は一部をご紹介させて頂きます。

「色のつかい方がすごく素敵」
「木村忠太さんの色が美しくて素晴らしい」
「忠太さんの絵が好きなのでまた観る機会があって本当に嬉しかったです!色づかいやタッチなど全てが絶妙でした!」
「パリに行ってみたい気持ちになりました」
「好きな色、線を見つけました。色の奥深さ、空気感で想いが伝わる気がしました」
「フランスの風景とかよくわからないけど、目をうばわれました」
これらは木村忠太さんの欄に貼られていたメッセージです。
光・色彩があふれる木村さんの作品が、コロナ禍ですが、海外へ思いを馳せるきっかけになったかもしれませんね。

「笠木先生!!ありがとう。スキーも教えて頂きました」
「てふてふ 10年の歳月より後、より完成度の絵を描く忍たいと集中力、さすが本物の芸術家!」
「色づかいが好きでした。年賀状がかわいくて毎年ほしいなと思いました」
特集展示でご紹介した、友人同士の笠木實さん・清宮質文さんの欄には、お二人の交友のようにほっこりあたたかいメッセージも。

「感性を磨く「心の旅」をすることが出来ました。いつもありがとうございます」
「日本人画家見直しました」
「永久に伝えたいすばらしい作品群」
「心の中におくりものを届けてくれてありがとう」
展覧会へのメッセージもありがとうございました。
作品を遺してくださった作家達、素晴らしい作品を寄贈・寄託してくださった所蔵者の皆様、ご来館くださる皆様や、コロナ禍でも気にかけてくださる皆様・・・多くの方々への感謝の気持ちがより強くなった展覧会となりました。

最後に、かわいらしいメッセージシールをご紹介します。
様々な色のペンを用意していたのですが、何色も使ってカラフルに描いてくださったメッセージシールです。
右側はハートがたくさん!

カラフルなメッセージカラフルなハートのメッセージ

こちらは鶴岡政男さんの作品の影響でしょうか、かわいらしいキャラクターが描かれています。

清宮質文と鶴岡政男へのメッセージ

ご参加の皆様、素敵なメッセージをお寄せくださり、誠にありがとうございました!

みじかい解説会「めざめとゆめ」第2~4回 中止のおしらせ 2021年5月15日

新型コロナウイルス感染症感染拡大防止の観点から、残念ながら本日開催予定だったみじかい解説会「めざめとゆめ」の第2回「魂の印象派 木村忠太」以後のみじかい解説会が中止となりました。

解説会中止の様子
中止の決定が直前だったため、参加ご希望で会場にいらっしゃる常連のお客さまも…
おわびを申し上げ、解説シートを配布してご質問をお受けすることにしました。

第3回「鶴岡政男の素描」5月29日(土曜日)、第4回「笠木實と清宮質文」6月12日(土曜日)も中止ですが、会場で解説シートを配布してご質問にお答えするようにいたしますので、どうぞご了承ください。

すでに開催した第1回「群馬、高崎ゆかりの作家たち」もふくめ、全4回分の解説シートを「新収蔵・寄託作品公開 心からのおくりもの」展トップページに掲示しておりますので、会場にお越しいただけない皆さまも、ぜひご活用ください。

新型コロナウイルス感染症、そしてもうすぐ梅雨。なかなか晴れ間が見えませんが、皆さまどうぞお気を落とされませんよう。そして何よりお体をお大事になさってください。

*今後予定が変更される場合がありますので、当館ホームページをご確認ください。

みじかい解説会「めざめとゆめ」 第1回「群馬、高崎ゆかりの作家たち」を開催しました! 2021年5月1日

「新収蔵・寄託作品公開 心からのおくりもの」のみじかい解説会「めざめとゆめ」の第1回、「群馬、高崎ゆかりの作家たち」を先着10名様で5月1日(土曜日)午後2時から30分開催しました。

5月1日の解説会の様子

G.W.最初の土曜日、首都圏の緊急事態宣言などでお客様もまばらですが、8名様にご参加いただき、間隔に注意して1階第1展示室で群馬、高崎ゆかりの作家7名の「めざめとゆめ」をご紹介しました。

最年長の井上房一郎さんと最年少の和南城孝志さんの間に50歳の年齢差がありますが、西洋にあこがれ、美にめざめ、夢を追った人生を駆け足、早口で振り返りました。
実は直前に、尊敬する方の訃報に接し、乱れた心が空回り(汗、涙…)。
人の人生を振り返るのは本当に難しいと、やや自嘲気味のトークになってしまい、ご参加の皆さまに申し訳なく反省しております。

これからのみじかい解説会の予定は…
第2回は5月15日(土曜日)午後2時から30分間「魂の印象派 木村忠太」、
第3回は5月29日(土曜日)午後2時から30分間「鶴岡政男の素描」、
第4回は6月12日(土曜日)午後2時から30分間「笠木實と清宮質文」です。
先着10名様限定、開始15分前の午後1時45分から受付で整理券を配布します。

*今後予定が変更される場合がありますので、当館ホームページをご確認ください。
ご参加の皆さま、ありがとうございました。またのご参加をお待ちしております。

「心からのおくりもの」開幕しました 2021年4月17日

本日4月17日(土曜日)より、企画展「新収蔵・寄託作品公開 心からのおくりもの/同時開催 生誕100年笠木實と没後30年 友人、清宮質文」が開幕しました!

昨年度の「時代への花束」展でご好評いただいた「メッセージシールコーナー」。
「心からのおくりもの」でも「心からのメッセージを」として、皆さまにメッセージを貼っていただくコーナーがあります。

メッセージコーナー(4月17日現在)
この展覧会でご紹介する11人の略年表に、ぜひ感想やメッセージをお寄せください。

心からメッセージシール
メッセージシールは山口薫さんのパレットと、展示作品の山名將夫さん《百合》をご用意しました。
お好きなシールにマジックでメッセージを書いて、入口正面の略年表に貼ってください。
もちろん撮影もOK!(フラッシュ、動画、三脚撮影はご遠慮ください)

そういえば、最初の写真の奥に、黒衣の美しい女性の姿が…
撮影可《回想のメロディー》
ポスターになっている山名將夫さん《回想のメロディー》ですね。
会場ではメッセージコーナーのほか、この作品のみ撮影可能です。
ご来館の記念撮影はいかがですか?

展覧会は6月13日(日曜日)まで開催しております!
皆さまのお越しをお待ちしています!

関連事業のお知らせ

1.みじかい解説会「めざめとゆめ」

学芸員が展示室でテーマごと30分の短い解説会を行います。

(1)「群馬、高崎ゆかりの作家たち」
  • 日時:5月1日(土曜日)午後2時~
  • 会場:高崎市美術館 1階第1展示室
  • 定員:先着10名様(開始15分前から受け付けにて整理券をお配りします)
  • 参加費不要、美術館観覧料が必要です。
(2)「魂の印象派 木村忠太」
  • 日時:5月15日(土曜日)午後2時~
  • 会場:高崎市美術館 2階第2、3展示室
  • 定員:先着10名様(開始15分前から受け付けにて整理券をお配りします)
  • 参加費不要、美術館観覧料が必要です。
(3)「鶴岡政男の素描」
  • 日時:5月29日(土曜日)午後2時~
  • 会場:高崎市美術館 3階第4展示室
  • 定員:先着10名様(開始15分前から受け付けにて整理券をお配りします)
  • 参加費不要、美術館観覧料が必要です。
(4)「笠木實と清宮質文」
  • 日時:6月12日(土曜日)午後2時~
  • 会場:高崎市美術館 3階第5展示室
  • 定員:先着10名様(開始15分前から受け付けにて整理券をお配りします)
  • 参加費不要、美術館観覧料が必要です。

2.心からのメッセージを

会期中、作家や作品へのメッセージを特設コーナーに随時貼付していただけます。
(会期中貼りかえる場合があります)

「心からのおくりもの」展示替え中 2021年4月1日

美術館外観メインサイン、高崎駅西口ペデストリアンデッキにある看板が次回展「心からのおくりもの」仕様になりました。

高崎市美術館外観の画像
高崎市美術館外観

​高崎市美術館外観メインサインの画像
高崎市美術館外観メインサイン

​高崎駅西口ペデストリアンデッキ看板の画像
高崎駅西口ペデストリアンデッキ看板

今回は関連事業として学芸員による「みじかい解説会」、お客様にご参加いただく「心からのメッセージを」を準備しております。4月17日(土曜日)より始まりますのでお楽しみに!

展覧会の詳細は以下のページをご確認ください。

「新収蔵・寄託作品公開 心からのおくりもの/同時開催 生誕100年 笠木實と没後30年 友人、清宮質文」

展示替え休館と次回展のお知らせ 2021年4月1日

3月29日(月曜日)~4月16日(金曜日)は高崎市美術館・旧井上房一郎邸ともに展示替え休館となります。
次回、企画展「新収蔵・寄託作品公開 心からのおくりもの/同時開催 生誕100年笠木實と没後30年 友人、清宮質文」は4月17日(土曜日)から開催いたします。

心からのおくりものチラシ表画像

本展覧会は近年寄贈、寄託された10名の作家の新収蔵、寄託作品をご覧いただきます。
また2020年に生誕100年を迎えた桐生市出身の画家、笠木實とその友人、清宮質文の作品をご紹介します。

関連事業のお知らせ

1.みじかい解説会「めざめとゆめ」

学芸員が展示室でテーマごと30分の短い解説会を行います。

(1)「群馬、高崎ゆかりの作家たち」
  • 日時:5月1日(土曜日)午後2時~
  • 会場:高崎市美術館 1階第1展示室
  • 定員:先着10名様(開始15分前から受け付けにて整理券をお配りします)
  • 参加費不要、美術館観覧料が必要です。
(2)「魂の印象派 木村忠太」
  • 日時:5月15日(土曜日)午後2時~
  • 会場:高崎市美術館 2階第2、3展示室
  • 定員:先着10名様(開始15分前から受け付けにて整理券をお配りします)
  • 参加費不要、美術館観覧料が必要です。
(3)「鶴岡政男の素描」
  • 日時:5月29日(土曜日)午後2時~
  • 会場:高崎市美術館 3階第4展示室
  • 定員:先着10名様(開始15分前から受け付けにて整理券をお配りします)
  • 参加費不要、美術館観覧料が必要です。
(4)「笠木實と清宮質文」
  • 日時:6月12日(土曜日)午後2時~
  • 会場:高崎市美術館 3階第5展示室
  • 定員:先着10名様(開始15分前から受け付けにて整理券をお配りします)
  • 参加費不要、美術館観覧料が必要です。

2.心からのメッセージを

会期中、作家や作品へのメッセージを特設コーナーに随時貼付していただけます。
(会期中貼りかえる場合があります)